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高川学園MF北「奥野を日本一の主将にしたかった」 大けがで欠場の主将へV届けられず「本当に悔しい」

[ 2022年1月8日 18:37 ]

第100回全国高校サッカー選手権準決勝   高川学園0―6青森山田 ( 2022年1月8日    国立 )

<高校サッカー準決勝 青森山田・高川学園>試合に敗れガックリの高川学園イレブン(撮影・西海健太郎)
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 聖地・国立競技場で“嵐”は巻き起こらなかった。14年ぶりの4強に勝ち進んだ高川学園(山口)は青森山田に0―6で敗戦。選手が輪になってぐるぐる回る「トルメンタ(イタリア語で嵐)」を出せずに終了の笛を聞き、ゲームキャプテンを務めたMF北健志郎(3年)は「決勝に行って日本一になりたかった。負けてしまって本当に悔しい」と唇を噛んだ。

 絆の物語は準決勝で終焉(しゅうえん)を告げた。選手宣誓を務めた主将のDF奥野奨太(3年)は、大会約1週間前の試合で全治5カ月の大けが。高校最後の選手権への出場は叶わなかった。しかし、決して腐らなかった。「チームのために何ができるかを考えて、少しでもチームが勝てるように頑張りたい」とし、「チームメートが自分の気持ちまで背負って頑張ってくれると思う」と仲間たちに思いを託した。

 そんな気持ちに応えるようにチームは快進撃を続けた。海外メディアから注目を集めたセットプレーでの奇抜なトリックプレー「トルメンタ」を大きな武器として、ベスト4に進出。優勝候補の壁は高く、決勝の舞台には届かなかったものの、確かな足跡を残した。

 北は奥野の存在の大きさが快進撃の要因だったと振り返る。「大会前に奥野がけがをして、チームとしても上手くいかない時期が長く続いた中で大会が始まった。そんな中で『奥野を絶対に国立に連れて行こう』とチームが一つになって、初戦に勝てて勢いに乗れてここまでこれた」。準々決勝の桐光学園(神奈川)戦で勝利し、「(奥野を)日本一のキャプテンにするんだ」と覚悟を新たにした。

 苦しい練習を、楽しい時間を、そして学生生活をともに歩んできた。「負けて申し訳ないと伝えたが、奥野はありがとうと言ってくれた」。だからこそ北は奥野を日本一の主将にしたかった。だからこそ奥野は感謝を伝えた。

 ラグビーの元ニュージーランド代表で、世界的な名選手だった故ジョナ・ロムー氏はこんな言葉を残した。「ニュージーランドでも罰走のような練習があった。何十回もグラウンドを往復させられ、目標タイムを切れなければさらに増える。もう足は動かない。頭は下がる。しかし、ふと両脇を見ると仲間も同じように走っている。こいつらが一緒なら乗り切れると思える。窮地に立たされれば人間の本当の姿も分かるんだ」。ともに汗を流した時間は消えない。同じ目標を目指した絆はなくならない。一つの物語は終わった。しかし、それは新章の幕開けにすぎない。

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