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神戸・酒井高徳インタビュー プレーで伝える29歳の覚悟 本物の「厳しさ」でチームを変える

[ 2021年2月23日 05:30 ]

スポニチ本紙のインタビューで現在の思いを語った神戸・酒井(C)VISSEL KOBE
Photo By 提供写真

 今週金曜日の26日、いよいよJ1リーグが開幕する。神戸の元日本代表DF酒井高徳(29)がスポニチのインタビューにオンラインで対応。Jリーガーで初めて新型コロナウイルス感染者となった昨季の苦闘を振り返りつつ、新シーズンへの覚悟を口にした。

 ――始動から順調に来ている。昨季はコンディション調整が難しかったと話していた。
 「(入院した昨春の)約4週間は全くサッカーをしない状況で、退院してから、チームが始動してから急ピッチで組み立てて、なかなか体に浸透しないままリーグが再開した。再開後は連戦が続いて状態を整える時間があまりなく、心肺機能や体の機能、筋力など、100%の準備をして臨むことが難しかった」

 ――違和感を抱えながらプレーしていた。
 「頭の中で思い描いている理想の動きと、現実とのギャップがずっとあった。“あと一歩で追いつけるのにな”という場面で足が出なかったり、本当なら走りきれる場面で走り負けたり、力が入らなくてボールを奪われたり。“コンディションが整っていないな”という感覚は、再開後の最初の試合からあった。何もリアクションをしてなかった訳ではなく、体のケアとランニング、心肺機能。自分の専属トレーナーやチームのトレーナーの方に相談したりして、コンディションは少しずつ良くなっていってはいたけど。“調子良いな”と思える体の切れは正直(再開後の)ACLまでなかった」

 ――その課題も踏まえて始動。13日までの沖縄キャンプでは早朝に自主的に走っていた。
 「朝の6時30分に起きて、亮(初瀬)とスタッフと20~25分ぐらい。体脂肪で気になる部分があって。早朝の空腹時にランニングをすると効果があるので、ドイツ時代からやっていた。体脂肪率のベストは10%から、いっても11%だけど、昨年は最も悪い頃で12~13%。代表に呼ばれている時は9~10%だったので、そのあたりまで戻したいなと。体の軽さはトレーニングでも感じています」

 ――コロナに感染。今だからこそプラスに感じていることは?
 「プラスはあまりないけど…。ただ、サッカーができない苦しみ、できる喜びをかみしめたタイミングでした。やっぱり自分たちはサッカーでしか表現できないし、サッカーができないことが一番つらい。いろんな人の協力があって今、Jリーグができて、練習ができて、キャンプができる。凄くありがたいことだと感じています」

 ――今季はしっかり準備ができている。
 「コンディションにかける時間は明らかに昨季とは違う。言い訳はできないし、ここまで準備をして、コロナのせいにはできない。危機感を持って、やること、やれること、やらなきゃいけないことをしっかりと整理しながらやらないといけない。降格も4チーム、あるので。自分たちは安定した位置にいないこと、昨年の順位が良くなかったことを自覚しないといけない」

 ――昨季は14位。ACL出場権獲得を目標としているチームに必要なことは。
 「細かいことを言えばいろいろあると思うけど、僕は“覚悟”かなと思います。戦術うんぬんや攻撃、守備というよりも、覚悟を持ったプレーを表現できるかどうかが一番、大事かなと。ACL出場権を獲得する、上に行く、優勝するとかもそうですけど、言葉で発するからには、それなりの覚悟がないといけない。100%の自信がないのであれば、それに見合った、それ相応の目標を掲げるべき。クラブや監督からそういう声がかかり、目標を持ってやっていることを聞いて実践しているのであれば、覚悟を持ったプレーをしないといけない。(天皇杯で)優勝した経験もあるし、こうやってメンバーがいても上にいられないことも昨年に経験している。どちらの可能性もあるということを頭に入れながら、覚悟を持ってプレーすることがチームのプラスにつながっていくと思う。受け身になれるほど、自分たちは余裕のあるチームじゃない。簡単な試合は一つもないので、自分たちがチャレンジしながら、全力で勝っていく覚悟と気持ちを持ち合わせないといけない」

 ――神戸に加入して3年目。その覚悟がチームに足りていないという思いは?
 「ありますね。チームの流れが悪い時にこそ、若いとか経験があるとか関係なく、声を張り上げてプレーで見せることも必要。それが、お互いを引っ張っていく訳で。ベテランや経験のある選手がしゃべる。それもそうだけど、それに周りが流されて見ているだけじゃなくて。要求や喜び、試合に負ける悔しさ。自分からそういう面を出していかないとチームは成熟していかないし、それも覚悟や責任だと思う。若い選手が“自分が活躍してやるんだ”“神戸を高い位置に持って行くんだ”という覚悟があれば、必然的にしゃべるだろうし。自分が貢献するのはもちろんですけど、チームとして、そこはまだまだ足りていないと思う。勘違いしないでほしいのは、頑張っていないとかそういう訳じゃなく、みんな一生懸命で、真面目な若手ばかりですけど。もっとこう、覚悟や自信、責任、何かを犠牲にしてサッカーをやらないといけない重要性を分かってもらいたいなと思います」

 ――その重要性を酒井選手が痛感したのはいつ頃?
 「やっぱり自分は、ドイツで残留争いをすることが多かったので。それを繰り返すことは、あまり良いことではないんですけど…。こんな言い方をしたらあれかもしれないけど、Jリーグっていうのは、降格はもちろん悲しいことだけど、降格した時や、順位が下のチームに負けた時も、選手やスタジアムの雰囲気がそこまで負けたことに対しての悔しさがないというか。“次に頑張ろう”というのは日本人の良さでもあり、悪さでもあると思うけど、勝敗に関しては一喜一憂してもいいのかなと自分は思っていて。負けた時のプレッシャーや危機感。この試合に負けたらとか、ここで勝たなかったら…という試合を自分は戦ってきた。降格した時の恐怖というか、自分が明日生きていられるのかも分からないような雰囲気の中でスタジアムにいることを考えただけでも、凄く怖い。その状態に陥っても、自分のパフォーマンスを発揮しなくちゃいけない。そういうところでもまれてきたのは大きいかなと思います」

 ――そういう部分はなかなか伝えにくい。今年の神戸の雰囲気は?
 「凄く意欲的で、真面目で、勤勉な若手が多いかなという印象はあります。来た当初は、そうでもなかったんですけど(笑い)。だいぶ変わったかなと思いますし。ただ、自分が今言ったような本気の部分を伝えようと思ったら、厳しい言葉ばかりになってしまう。それに若手が耐えられるかなとは思いますけど(笑い)。そういう部分は、言葉で言わなくても、自分をしっかり見てくれていたら分かると思う。1回の1対1、クロス、パス、シュート…。どれだけ自分が突き詰めてやっているかは練習でも分かると思うので。練習とはいえ、失点しても何とも思っていない選手はいまだにけっこういますし。まだまだ緊張感が足りない部分はある。より、浸透していけばと思っています」

 ――改めて、個人を含め今季の目標を。
 「去年より上の数字を残したい。アシストや得点もそう。後はやっぱり、昨年は失点が多くて大変なシーズンだったので(リーグワースト4位タイの59失点)。ディフェンダーとして、失点が多いというのは許しがたいこと。失点を少なくすれば、おのずと順位や得点も上がっていくと思う。一つでも多く勝ち点を積み重ねて、高い順位にいけるようにしていきたいです」

 ◆酒井 高徳(さかい・ごうとく)1991年(平3)3月14日生まれ、米国出身の29歳。日本人の父とドイツ人の母の間に生まれ、2歳から新潟県三条市で育つ。新潟ユースから08年に2種登録、09年にトップ昇格。11年にドイツ1部シュツットガルトへ移籍。15年からハンブルガーSVに在籍し、19年8月に神戸へ完全移籍。日本代表としては国際Aマッチ42試合出場0得点。1メートル76、74キロ。利き足は右。

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