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シュツットガルト遠藤航 ドイツからの「年賀状」 A代表で「絶対的な存在に」

[ 2021年1月1日 11:30 ]

シュツットガルトの遠藤航がインタビューに応じた (C)長谷川俊次
Photo By 提供写真

 ドイツ1部シュツットガルトの日本代表MF遠藤航(27)がスポニチ本紙の単独インタビューにオンラインで応じた。今季は1部初挑戦ながらここまで全13試合にフル出場し、ハイパフォーマンスを維持。リーグ公式サイトによるとデュエル(ボールを奪い合う攻防)勝利数は211で、2位に32もの差をつけてトップを独走している。20年を振り返るとともに、22年W杯カタール大会アジア2次予選と最終予選、そしてオーバーエージ(OA)枠での出場が期待される東京五輪が待つ21年への思いを聞いた。(聞き手・古田土 恵介)

 ――20年はどんな一年だったか。
 「試合に出続け、チームに貢献できた充実した年でした。濃かったですね。ドイツ2部で昇格争いをしている最中にコロナ禍でリーグ戦が中断。サッカーができるのかという不安もありました。1部昇格を果たし、今季はトップディビジョンでどれだけ結果を残せるのかというところにトライしています」

 ――1部のプレースピードやインテンシティー(プレー強度)への戸惑いは。
 「2部とはレベルが全然違うと聞いていたので不安はありました。ただ、試合でプレッシャーを感じたり、緊張するタイプではなく、思った以上のパフォーマンスを発揮できている感覚があります」

 ――日本代表での立場にも変化があった。
 「一番感じたのは周りの選手からの信頼です。ボールが集まってくるし自分のやりやすい環境でプレーできている気がします。海外の日本人選手はお互いの結果をよくみているので、ドイツ1部での頑張りやプレー面の変化が信頼につながっているのだと思います」

 ――21年をどのような一年にしたいか。
 「クラブでは、地に足を着けて残留が目標。欧州リーグ、その上の欧州チャンピオンズリーグも狙えると思っていて、達成できれば来季は欧州の舞台とドイツ1部を戦い抜くタフなシーズンになる。成長して、かなえられるように頑張ります」

 ――リーグ公式サイトによると、デュエル勝利数で1位。充実しているがプレー面の課題、今後の目標は。
 「インテンシティーは1部でのプレーで上がっている感覚はありますが、一方でバイエルンなどトップと対戦する際には守備での自分の良さを出しにくかったり、差を感じます。攻撃ではボールを受けて、相手に奪われずにさばけるようになりましたが、自陣ペナルティーエリアでしっかりと守って、相手ペナルティーエリアに入っていくボックス・トゥ・ボックスの点でもっとやれると思っています。得点もボランチがミドルシュートを決めるとチームとしては助かるので、今年は絶対に決めたいです」

 ――日本代表では22年W杯のアジア2次予選が控え、その先には最終予選がある。
 「中盤でプレーするからには中心的な存在にならないと、チームが安定感のあるパフォーマンスを出せません。自分にプレッシャーをかけながら、存在感を出したい。A代表のアジア予選には中心選手として臨んだ経験はありません。連係しながら普段通りのプレーを見せられるか。メンタル勝負ですね」

 ――21年は東京五輪がある。リオ五輪の経験者として、後輩にアドバイスは。
 「大会前は五輪が全てくらいに考えていましたが、振り返ると通過点。出られなくてもキャリアが終わるわけではない。選ばれたら金メダルを目指して頑張ってほしいですけど、そのことは頭の片隅に置いておいてほしいです」

 ――OA枠について。
 「自国開催は人生でなかなか経験できることではありませんから、みんな出たいと思うのではないでしょうか。僕たちにできるのは、シーズンを通して試合に出て、パッと呼ばれた時に貢献できる準備をすること。現世代はA代表経験者が多いですから、すりあわせは今までより難しくないと思います」

 ――もしOA枠に選ばれたら。
 「A代表で絶対的な存在になる、自分が中心になるという目標を持ってプレーをしていれば、もし呼ばれてもそういうふうに振る舞えると思っています。リオ五輪では(浦和FW興梠)慎三さんたちが本当に心強かったですし、プレーも頼もしかった。自分も引っ張っていきたいですね」

 ◆遠藤 航(えんどう・わたる)1993年(平5)2月9日生まれ、神奈川県出身の27歳。湘南の下部組織から湘南を経て16年に浦和に移籍。18年にベルギー1部シントトロイデンで欧州初挑戦し、19年からはドイツ2部(現1部)シュツットガルトに活躍の場を移した。ボランチ、SB、CBをこなし、各年代別の日本代表にも選出。16年リオ五輪では主将を務めた。J1通算127試合13得点。国際Aマッチ通算25試合1得点。1メートル78、76キロ。

 《取材後記》激しいデュエルが身上のプレーぶりとは裏腹に、遠藤の受け答えは実にソフトだった。「謙虚にやらないといけないですし、地に足を着けるというのがずっと自分のベースです」。真剣な表情で向き合いつつ、時折、笑顔を見せてくれる。それでも「A代表で主軸にならないといけない。自分にプレッシャーをかけてやっています」と芯には力強さを垣間見た。今季はここまでデュエル勝利数でリーグ1位を記録するなど脂も乗り、名実ともに“代表の顔”となるべく異国で努力を続ける。湘南の下部組織に所属していた10年に2種登録でJデビューし、27歳。笑顔の下で闘争本能を燃やす男の「絶対的な存在になる」という宣言が実現する一年になることが楽しみでならない。(古田土 恵介)

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