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スポーツの価値を高めるために――スポーツトレーナー界の展望

[ 2020年2月18日 10:00 ]

スポーツトレーナーを育成、支援するThe Stadium社の山田晃広代表取締役社長
Photo By スポニチ

 近年、スポーツトレーナーを育成、支援する「The Stadium」社がメジャーリーグ、プロ野球、Jリーグ、陸上界、バトミントン界など様々なスポーツ界にトレーナーを輩出している。サッカー・スペイン1部リーグでトレーナーとして日本人初のプロ契約を結んだ経歴を持つ山田晃広代表取締役社長(45)に同社の取り組みや今後のトレーナー界の展望について話を聞いた。(聞き手・柳原 直之)

 ――山田社長がJリーグのチームのトレーナーからスペインに渡った経緯について。
 「その時に務めていた会社(治療院)から出向という形でヴァンフォーレ甲府(サッカーJ1)に3年ほど携わりました。僕にとって初めてのプロチームのサポートでしたが、選手一人ずつがチームと契約している環境。外国出身の選手、コーチとの触れ合いなどいろいろと学ばせてもらい、刺激のある3年間でした。それがきっかけで、海外でプロスポーツトレーナーになりたいと思いました。その時、たまたま羽中田昌さんの本を見て、衝撃が走りました。天才サッカー選手が事故で車いす生活を余儀なくされ、スペインでコーチのライセンスを取るという話です。文章が凄くきらきらして見えました。その時、私は転勤が決まっていましたが、本を閉じた瞬間、会社を辞めて、バルセロナに行くことを決めました。羽中田さんに手紙を出して、そこからFAXでやりとりをして。迷いはなかったですね」

 ――スペインでの生活は。
 「それまでトレーナーを7年間やっていたので、トレーナーとしての技術は心配していなかったですね。ただ、働くことになった町のクラブはハサミもなければ、テーピングもない。25歳の時で貯金を切り崩して生活してましたが、自分で全部そろえていました。ただ、何カ月かやっていたら、監督が気付きました。「うちにテーピングないだろ」という話になり、選手が費用を出してくれるようになりました。その後、スペイン3部リーグ・オスピタルレットでトレーナーとして働く話をいただいて、ようやく給料が8、9万円ほどもらえるようになりました。ありがたい話でした。その後には、同1部リーグ・ラシンサンタンデールの監督からお誘いをいただいて、プレシーズンの夏のキャンプに参加し、そのままプロ契約をさせてもらいました。キャンプの段階で、技術は絶対負けないと思ったし、1部リーグでも絶対できるという自信がありました。選手がチームの会長に“山田をこのままプロ契約にして残してほしい”と言ってくれたそうです。そこから2シーズン、働かせていただきました。スペインリーグはスペクタクルで、日本とは全てが違う感じでした。国民が全員サッカーを応援しているし、スポーツの地位がかなり高いと感じました」

 ――帰国後はJ1・湘南ベルマーレのトレーナーに就任。なでしこリーグのINAC神戸もサポートした。
 「09年頃ですが、世の中の人が神戸に女子サッカーチームあるなんて知らない時代でした。案の定、トレーナーの人材は足りていなくて。そこからサポートさせてもらいました。彼女たちからはうまくなりたい、何か吸収したいという気持ちが凄く伝わってきました。その後、澤さん、大野さんが加入しましたが、それでも練習場は転々としていました。道具も自分たちで運んで、洗濯も自分たちでしていた。練習に対する姿勢、考え方が凄かったなと思います。学ぶことが多かったです。その後、ワールドカップで優勝するなんて思いもしなかったですが、非常に心を動かされました」

 ――その後、「The Stadium」社を設立する。
 「スポーツの価値を高めていく会社をつくっていきたいなと思っていました。スポーツの価値を高めるためには、スポーツトレーナーがスキルを高めて、選手のケガを早く治し、選手寿命を延ばす。その技術は日本だけでなく外国でも通じるので、そういうトレーナーをどんどん出していきたいなと思ってスタジアムを立ち上げました」

 ――事業として軌道に乗るまでは苦労も重ねた。
 「スポーツトレーナーを育成する会社は世の中にあまりありません。どうやってプロの世界に入っていくかも分からない人が多いと思います。今も苦戦していますが、きちんとしたスポーツトレーナーになるために必要な知識や技術を誰でも通じるように完全にマニュアルにしています。どんな人でも48時間のプログラム(PSTプログラム)を受ければ、われわれの会社で提供できるというのがコンセプト。今はスポーツトレーナーになりたいという若者、転職を考えている人をスポーツトレーナー「塾」のような形でやらせていただいている。世の中に5万店くらいの整骨院、接骨院がありますが、一般の方にも通じる技術を提供していきたいと思っています」

 ――48時間のプログラムとは。
 「全てのスキルを指導する講座です。契約しているトレーナーが全国にいますし、インターンプログラムもあります。アウトプットする場所があるというのが大切なことです。エンゼルスの寺田トレーナーも講師として登壇します」

 ――エンゼルスのキャンプに研修生を毎年、派遣している。
 「エンゼルスのキャンプを見学し、寺田さんの講義をアメリカで聞くというのが非常に貴重な時間になります。メジャーの選手がどんな練習、ケアをしているのか、寺田さんがどんな動きをしているのか。われわれと契約している整骨院、接骨院さんで手技を学びたいという人を選ばせていただいています。エンゼルスのプログラムではなく、寺田さんのご厚意でやらせてもらっている。昨年に続き、今年も3月に派遣予定です。同じようなことをサッカーのスペインリーグでも行っています」

 ――今後の展望は。
 「われわれは専門学校や整骨院、接骨院さんと仕事をすることが多いです。プロスポーツチーム、アマチュアスポーツチーム、整骨院、接骨院さんにスポーツトレーナープログラムを入れさせていただき、人手がが足りない地元のチームと結びつけ、サポートしてもらう。スポーツの価値を高めるためには、スポーツトレーナーから作りませんかというのが我々のコンセプトです」

 PSTプログラムの詳細はこちら
 https://www.sportstrainer-education.net/

 株式会社The Stadium
 http://thestadium.co.jp/
 info@thestadium.co.jp

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