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スタイル確立までの厳しい道のり…大宮のダービー勝利から考える

[ 2017年5月2日 11:00 ]

4月30日の浦和戦で勝利し、祝砲を上げる大宮・茨田
Photo By スポニチ

 サッカーはつくづく難しいと思う。大宮が4月30日の浦和戦で、開幕から9試合目にして今季初勝利を挙げた。対戦チーム対策を徹底し、つかんだ勝利だった。ボランチの金沢を興梠にマンツーマンで付けて5バックぎみにして守るいつもと違う戦い方だ。それでも選手もスタッフもサポーターも大喜びしていたのでやはり結果が何よりだと思う。だが、手放しでは喜べないのも確かだった。

 大宮は昨年、年間5位。チーム史上最高の順位で、あと一歩でACLの出場権が獲得できるところだった。14年にJ2に降格したことを機に、それまでの守備を固めて外国人ストライカーが個人技で点を狙うサッカーから脱却。パスをつないで攻守に自分たちからアクションを起こすサッカーへの転換を目指した。

 強いチームには固有のスタイルがある。浦和も鹿島も川崎Fも相手によって戦い方を変えることはなく、いつも同じ戦い方をする。しかも攻撃的で積極的にゴールを狙っていく。だからサポーターが熱狂する。一方で、そこまで実力がないチームは、相手を研究して対策を立て、相手のいいところを出させないようにして結果を出すことを優先する。よく「勝つために割り切る」というが、どっちを取るか、ここがサッカーの難しいところだ。

 大宮は15年にJ2優勝、昨年も素晴らしい成績で、新大宮スタイルが確立されてきた。コンスタントに勝つためにはスタイルの確立が不可欠だからだ。今年も開幕の川崎F戦、第2戦のFC東京戦と互角以上にボールを保持し、内容は悪くなかったがともにセットプレーから先制されて敗れた。磐田、甲府にも敗れ、このあたりから勝つことを優先した戦い方になっていった。

 どんなにいいサッカーをしていても勝たなければ意味はない。勝つ事が自信にもつながる。逆にスタイルを貫いても結果が出なければ指揮官はクビになる。勝つ事にこだわるのは当然だと思う。

 スタイルを確立するまでには厳しい道のりがある。鹿島も浦和もここまで来るには何年もかかった。割り切って勝ちながらも積み重ねたものを忘れずに戦っていく――。大宮が目指すスタイルを完成し、本当に強くなるためにはこの試練を乗り越えなければならない。ここからの戦いを注目したい。 (記者コラム・大西 純一)

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2017年5月2日のニュース