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村井チェアマン 八戸で見たスポーツ文化ともしびの瞬間

[ 2016年10月4日 12:00 ]

 10月に入った日曜日(2日)に青森県八戸市を訪ねる機会を得た。実に不思議な感覚なのだが、この東北の地方都市が輝きだす瞬間を目撃したように思うのだ。

 Jリーグ入会を目指すヴァンラーレ八戸を擁する八戸市は、ホームスタジアムとなるダイハツスタジアムを核とした八戸市多賀多目的運動場を整備したのだが、この日はそのオープンセレモニーだった。Jリーグには53のクラブがある。多くのクラブは既存の施設を改修して入会申請してくる場合が多いのだが、J3入会前に本格的なサッカースタジアムを新設してから入会申請を行ったのは、このヴァンラーレ八戸が初めてのケースなのだ。J3への入会条件にはJFLでの競技順位などスタジアム以外の要件も数多くある中、不退転の決意でまずはスタジアム投資を行ったのが八戸だということだ。

 電車の都合で予定よりかなり早くスタジアム入りしたのだが、既にスタジアムの外周には長蛇の列。30軒近く並んだ屋台では地元の主婦たちがかっぽう着姿でご当地グルメを準備している。オープニングセレモニーでは、この地区の全ての幼稚園児が集まったのではないかと思うほど、数多くの園児によるお遊戯がピッチ上で披露された。テープカットの際は花火が上がり、八戸の街中から老若男女がスタジアムに駆けつけ大いに歓声を上げている。その数5028人は八戸市のスポーツ興行史上最高の入場者数を記録した。

 八戸市は先の東日本大震災では津波の被害を受けた。その中でも、ここ多賀地区は大きな被害を受けたエリアだという。考えたくはないのだが、再び津波の被害を受けたときにスタジアムに逃げ込めば安全が確保できるよう、外階段から施設に入れるように防災拠点としての設計がなされている。メインスタンド側の建物の4階部分は避難所として設計されているなどスタジアムは競技の場所だけではなく、市民の生活のベースとなる場でもある。

 このスタジアムでの初試合を迎えたヴァンラーレはMIOびわこ滋賀を相手に奮闘したものの、0―2で敗れてしまった。試合終了後、スタジアムアナウンスの男性は「試合はまだまだ続きます。皆さん…」と言って声を詰まらせてしまった。これまでのさまざまな苦労が去来したのかもしれない。でも、こうした方々の思いがあれば、近い将来多くの市民とともに力を結集して必ずやJリーグの仲間入りをすることだろう。八戸の地にスポーツ文化のともしびが付いた瞬間を実感できた貴重な経験だった。(Jリーグチェアマン)

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