×

ネイマール 骨折離脱…王国暗雲も一丸「彼のために優勝を」

[ 2014年7月6日 05:30 ]

倒れこみ、腰を押さえて悲痛な表情のネイマール(AP)

W杯ブラジル大会準々決勝 ブラジル2―1コロンビア

(7月4日 フォルタレザ)
 ネイマールを悲劇が襲った。史上最多6度目の優勝を狙う開催国ブラジルが4日、コロンビアを2―1で破り、3大会ぶりに4強へ進んだ。しかし、後半43分、FWネイマール(22=バルセロナ)が相手DFファン・スニガ(28=ナポリ)の“膝蹴り”を背中に受けて腰椎を骨折。ブラジル協会は翌5日(日本時間6日)、全治4週間で残り試合を欠場する見通しと発表した。8日(同9日)の準決勝でドイツとぶつかるが、王国悲願の地元W杯優勝に暗雲が垂れ込めてきた。 
【試合結果 決勝T&日程表】

 ネイマールは泣いていた。悲劇は後半43分。浮き球をトラップしようとした時、背後からタックルを受けた。スニガの膝が腰を直撃。背番号10は苦悶(もん)の表情で倒れ込んだ。担架に乗せられピッチから運び出される際も顔を手で覆っていた。

 そのままフォルタレザ市内の病院へ直行。検査を受けた後、空路でリオデジャネイロへ移動し、救急車で近郊のキャンプ地に戻った。ブラジル協会は全治4週間と発表。チームドクターのロドリゴ・ラスマー氏は「残念ながら彼はプレーできない。手術の必要はないが、患部を固定しなければいけない」とコメントした。地元メディアによると、骨折箇所は第3腰椎の左側の横突起と見られ、後遺症が心配されるような重傷ではないが、今大会でのプレーは絶望となった。

 GKジュリオ・セザールは「言葉にできないくらい悲しい。彼がどれだけ今大会で輝き、国民を喜ばせたいと思っていたか、皆が知っている」と無念の思いを代弁した。

 優勝候補の地元ブラジルのエースは大会の主役だった。チーム最多の4得点を挙げて8強に導き、準々決勝でもCKからチアゴ・シウバの先制点をアシストした。活躍するごとにマークは厳しくなった。決勝トーナメント1回戦チリ戦では右太腿を痛めた。反則が今大会最多の54回もあったコロンビア戦でも、何度も危険なタックルを受けた。そして最悪の結末を招いてしまった。フェリペ監督は「ネイマールが狙われていることは誰が見ても明らかだった。(会見などで)ずっと指摘していたのに誰も聞かなかった」と嘆いた。

 準決勝ドイツ戦は主将で守備の軸のチアゴ・シウバが出場停止となる。ネイマールの代役はチェルシー所属のウィリアンが有力で、チアゴ・シウバのポジションにはダンテが入るが、戦力ダウンは否めない。それでもチアゴ・シウバは「チームはネイマールに頼ってきたが、彼が負傷したことで我々は変わる。“ネイマールのために優勝しよう”と一丸となるはずだ」とエースの離脱で結束力が高まると主張する。

 ブラジルには同じような試練を乗り越えた経験がある。62年チリ大会では、絶対的エースのペレが2戦目で負傷離脱する危機に見舞われながら優勝した。指揮官は「あと2段、階段を上ることができる」と明言した。フッキは「彼の分も走って、彼のために優勝を勝ち取ろう」と言った。セレソン(ブラジル代表)の誰もが同じ気持ちでドイツ戦のピッチに立つ。

 ▽腰椎横突起 腰椎の背中側にあり、左右に飛び出している骨の突起。背筋に覆われ、筋肉の力を腰椎に伝える役目を果たし、腰を強打したり、強くひねったりすると骨折することがある。骨折した場合の症状は腰痛、圧痛(押した時の痛み)、動いた時の痛みなど。神経を痛めることはほとんどないので、足のしびれや麻痺(まひ)が出ることはない。治療は腰の安静でコルセットなどで固定する。基本的には2~3カ月で競技に完全復帰できる。

 ▼馬渡正明氏(佐賀大医学部整形学科教授、J1鳥栖チームドクター)腰椎横突起の骨折は、交通事故による負傷では見られるが、スポーツでは非常に珍しい。負傷した場面の映像を見ても骨折しているとは思えなかった。相当強い衝撃があったのだと思う。痛みがあるため今大会はプレーできないだろうが、選手生命に関わるような負傷ではない。手術の必要もないし、安静にしていれば特別な治療も必要ない。痛みが取れればプレー可能で、数週間で試合に復帰できるのではないかと思う。

続きを表示

この記事のフォト

2014年7月6日のニュース