【競輪記者コラム】ラインには「可能性の拡大」と「証明」2つの意義がある

[ 2024年2月29日 14:50 ]

可能性を広げるために近畿以外の選手ともラインを組む決断をした山本伸一
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 ラインとは。競輪記者5年目で幾度も思うのだからオールドファン、選手は嫌というほど考えてきた永遠のテーマだろう。正直、人の価値観次第。正解も不正解もないと思う。ただ、最近しっくりきたのでコラムとして書き留める。

 その意義は2つ。1つ目は「可能性の拡大」。これは山本伸一(41=奈良)に言われてハッとした。2月5日が初日の宇都宮で、山本は岐阜の志田龍星に付く選択をした。近畿以外に付くのは初めて。「自力としてのこだわりもあるが、自分の可能性を広げたい」(山本)。結果、山本は志田の番手から優勝した。

 ラインは足し算ではなく掛け算。個人で戦うよりも数倍の力を発揮することが可能になる。もちろん後ろの選手だけが得をするわけではない。自力選手もラインができれば戦法が増え、援護も見込める。お互い、あるいは3人以上でメリットを享受し合って勝つ可能性を増やす。これがラインの基本だと思う。

 もう1つは「証明」である。これはある意味で可能性を軽視し己の人生観、いわゆる“競輪道”を貫くもの。直近では高松記念の決勝。東龍之介が菊池岳仁の番手で佐藤慎太郎と競った。勝つ可能性を広げるなら、競るとしてもこの位置ではないと感じた。ただ「自分の中のスジを通した」(東)。俺は“番手選手”という証明をした(当然、勝つための競りもある)。

 この証明は本当に難しい。なぜか。誰ひとり同じ“競輪道”を持つ選手はいないからである。あるトップ追い込み選手は高松記念決勝について「赤パンは輪界を引っ張る1つ上の存在。S班に競るのは疑問だった」と言う。正解、不正解はない。競りもあれば先行へのこだわりなどもある。この証明は車券こそ難しいが、競輪の面白さが詰まっている。

 勝つ可能性か、己の競輪道か。ラインには選手の葛藤と全てを懸けた選択がある。そんなヒューマンドラマが詰まったラインがあるから、競輪は面白い。


 ◇渡辺 雄人(わたなべ・ゆうと)1995年(平7)6月10日生まれ、東京都出身の28歳。法大卒。18年4月入社、20年1月からレース部・競輪担当。22年は中央競馬との二刀流に挑戦。23年から再び競輪1本に。愛犬の名前は「ジャン」。

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