【1976年８月】あなただけを／あおい輝彦　２年半ぶりのシングルのお手本は加山雄三

　★７６年８月ランキング★
１　横須賀ストーリー／山口百恵
２　あなただけを／あおい輝彦
３　あなたがいたから僕がいた／郷ひろみ
４　赤いハイヒール／太田裕美
５　山口さんちのツトム君／斉藤こず恵
６　霧のめぐり逢い／岩崎宏美
７　岸壁の母／二葉百合子
８　北の宿から／都はるみ
９　恋人試験／松本ちえこ
10　パタパタママ／のこいのこ
注目セクシー・バス・ストップ／浅野ゆう子
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。

【あなただけを／あおい輝彦】
　季節にピッタリ、夏の海辺のシーンを想像させるいわゆる“湘南サウンド”が、青春時代を少し前に卒業した３０代前後の層に支持され、オリコンチャートで６週連続１位。俳優として飛ぶ鳥を落とす勢いの俳優あおい輝彦が２年半ぶりにリリースした「あなただけを」は計７９万枚をセールスし、自身最大のヒット曲となった。

　お手本にしたのは“若大将”こと加山雄三。「凝った歌よりも誰でも口ずさめるポップスを」という基本線から、作詞は「学生街の喫茶店」などで知られる元ガロの大野真澄に、作曲はフォークグループ「猫」の常富喜雄に依頼。２人とも「あなただけを」とは違った世界を歩んできたが、そこは注文通り仕上げてヒットにつなげた。

　関西から火がつけばヒットにつながる――。そういうジンクスがこのころの芸能界にはあったが、湘南の風を感じさせる歌にもかかわらず、大阪の有線放送が発信源となって全国へ。俳優としてのあおいのファンとともに、あおいがグループサウンズ「ジャニーズ」に所属していた頃からのファン、さらに男性もレコードを手に取ることも多く、レコード会社「テイチク」の狙い通り「誰でも口ずさめるポップス」という路線は大成功を収めた。

　後にＴＢＳの時代劇「水戸黄門」の助さん役を長年務めたあおいの芸能界デビューは１４歳。映画「ウエストサイド物語」に感激して、同級生らとともに１９６２年(昭３７)に「ジャニーズ」を結成。現在、人気グループを多数輩出しているジャニーズ事務所から最初にデビューしたのが、あおいら４人組だった。

　６７年１１月に解散後は、活躍の場を俳優に移し、時折新譜を出していた。「３０歳までは試練の時。徹底的に自分をいじめて、さまざまなチャレンジをしたい」と、この年映画「犬神家の一族」などに出演し、多忙を極める中での歌手活動だった。翌７７年にも「Ｈｉ―Ｈｉ―Ｈｉ」をリリース。２６万枚を売り上げる、スマッシュヒットを飛ばした。