365日 あの頃ヒット曲ランキング 6月

【1983年6月】初恋/村下孝蔵 中学2年の時の淡い思いをそのまま…

[ 2011年6月24日 06:00 ]

46歳の若さでこの世を去った村下孝蔵
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 ★83年6月ランキング★
1 探偵物語/薬師丸ひろ子
2 トワイライト~夕暮れ便り~/中森明菜
3 エスカレーション/河合奈保子
4 め組のひと/ラッツ&スター
5 初恋/村下孝蔵
6 天国のキッス/松田聖子
7 矢切の渡し/細川たかし
8 時をかける少女/原田知世
9 シャワーな気分/田原俊彦
10 素敵にシンデレラ・コンプレックス/郷ひろみ
注目僕笑っちゃいます/風見慎吾
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。

【初恋/村下孝蔵】

 好きだよと言えずに初恋は…。青春の甘酸っぱさが曲全体に広がる、1曲は30歳にして発表した5枚目のシングル。梅雨時の6月に有線放送やラジオのヒットチャート上位に入り、レコード売り上げもアップ。切ないフォーク調の歌は、レコードを普段あまり買わない中高年にも支持された。

 「30にもなって青臭い歌を歌っているんだと思うかもしれないが、今だからこそ歌える歌でもある。中学生の頃の感覚を残しておきたいんです」。

 歌詞は村下の実体験に基づいたものだった。熊本の中学時代、テニス部の女の子を好きになった。放課後の校庭をラケットを握りながら、走り回る可憐な少女。それを校舎の窓から見る孝蔵少年。「好きだよ」のひと言が言えないまま、彼女は転校してしまった。その面影がいつまでたっても忘れられない…。

 実家は映画館を経営。子供の頃から芸能の世界に近い場所にいた。エルビス・プレスリーに憧れ、中学の時に見た映画「エレキの若大将」に感化され、ラワン材を糸ノコで切ってボディを作り、弦の変わりに釣り糸を張ったギターを作製。これでテクニックを磨いた。

 熊本・鎮西高時代は平泳ぎの選手として活躍。新日鉄八幡の水泳部にスカウトされ入社。しかし、記録が伸びなかったことでわずか半年で退社し、音楽の道へ。両親が引っ越していた広島に住み、吉田拓郎を輩出した広島フォーク村を拠点に活動。生活のためにピアノの調律師をしながら、ソニーのオーディションで中国地区の優勝者となり、プロデビューしたのは27歳のときだった。

 テレビに出て目立つことをせず、地道にライブ活動をしてきた。そんな村下が突然この世を去ったのは99年6月24日。20日に東京・駒込のスタジオでコンサートツアーのリハーサル中に高血圧性脳出血で倒れ、病院に運ばれたが、意識不明の状態が続き、帰らぬ人となった。まだ46歳の若さだった。

 スタジオで倒れた日は6月の第3日曜日。「父の日」だった。幼稚園に通う末娘から曜日指定で届けられた感謝の手紙を読むこともなく天国へと旅立ってしまった。

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