365日 あの頃ヒット曲ランキング 6月

【1993年6月】サボテンの花/リバイバルソングに再度脚光 財津和夫「他人の歌の気分」

[ 2011年6月9日 06:00 ]

「サボテンの花」がリバイバルヒットした財津和夫
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 ★93年6月ランキング★
1 裸足の女神/B’z
2 揺れる想い/ZARD
3 夏を待ちきれなくて/TUBE
4 君が欲しくてたまらない/ZYYG
5 果てしない夢を/ZYYG、REV、ZARD&WANDS
6 MELODY/福山雅治
7 はじめての夏/SMAP
8 サボテンの花~ひとつ屋根の下より~/財津和夫
9 ときの旅路~REXのテーマ~/米米CLUB
10 別れましょう私から消えましょうあなたから/大黒摩季
注目刹那さを消せやしない・傷だらけを抱きしめて/T―BOLAN
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。

 【サボテンの花~ひとつ屋根の下より~/財津和夫】

 それぞれの心の奥にしまった思い出の曲が18年の歳月を経て再度脚光を浴びた。

 人気グループだった「チューリップ」が75年2月に発売したシングルを、ボーカルだった財津和夫がセルフカバーし、アレンジを変えてリリース。俳優の江口洋介、酒井法子、福山雅治らが出演し、兄弟の絆を描いたフジテレビ系ドラマ「ひとつ屋根の下」の主題歌になったことで60万枚を売り上げた。

 90年代のドラマの主題歌は売れっ子アーティストによる新曲が次々と登場し、せわしくランキングが変わっていったが、その中で70年代にスマッシュヒットした曲が顧みられたのは、「ひとつ…」のプロデューサー、大多亮氏の発案。「いい曲で若い人にも聴いてもらえる、70年代の歌を使ってみたい」というものだった。

 女性が「ほんの小さな出来事」で男性との暮らしを突然やめて出て行ってしまう歌詞は財津の体験に基づいたものだという。財津はサボテンの花にどんな思いを託したのか。「僕が言いたいのは、失恋した後の希望です。刺々しい日々のなかで、小ちゃく咲いた赤いサボテンの花。もし大きな花だったら、タイトルにしようとは思わなかったですね」(「そして音楽が始まる」名曲に隠された感動のドキュメント テレビ東京「そして音楽が始まる」編)。

 財津にとってはソロでのヒットは80年の年明けにヒットした「Wake Up」以来久々。ドラマを見た若い世代は財津はもとより、平成の世になってすぐ解散したチューリップのことすら知らずに、コンサートに足を運ぶケースさえあった。

 財津の思いは少々複雑だった。「もうずっと前の歌。音楽の表現者としては、今の自分が出ていなければ、音楽をやっている意味がない。確かに自分が作った歌だけど、気分としては他人の歌を歌う気分」。

 そう言いながらも、もう一度自分の子供のような作品に新風を吹き込み、「サボテン…」を歌う気になったのは、財津が音楽活動を始めるきっかけになったビートルズのポール・マッカートニーの映像を見てからだった。

 「ステージでビートルズ時代の曲を半分ぐらいやっている。それがメチャクチャ良かった。総合点では昔の方が声も迫力もあるのだけれど、僕もちょっとやってみようかなって」。

 チューリップと決別したはずだったが、昔を時々振り返るのもいいと思ったきっかけになった。以後、時折再結成しツアーに出かけた。財津が70年代にコンサートで言っていた「1999年9月9日午前9時9分9秒、京都の金閣寺で会いましょう」と言う合言葉も、ファン900人が集まり実現したのも「サボテン…」での“復活”が大きい。

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