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【1970年6月】経験/辺見マリ いきなりため息交りに「やめて…」で新人賞総ナメ

[ 2011年6月3日 06:00 ]

70年にヒット曲「経験」を歌った辺見マリ
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 ★70年6月ランキング★
1 圭子の夢は夜ひらく/藤圭子
2 今日でお別れ/菅原洋一
3 経験/辺見マリ
4 四つのお願い/ちあきなおみ
5 愛の旅路を/内山田洋とクールファイブ
6 ドリフのほんとにほんとにご苦労さん/ザ・ドリフターズ
7 自由の女神/黛ジュン
8 くやしいけど幸せよ/奥村チヨ
9 あなたならどうかる/いしだあゆみ
10 女のブルース/藤圭子
注目笑って許して/和田アキ子
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。

【経験/辺見マリ】

 エキゾチックな顔立ちをした弱冠20歳の女性が、いきなりため息交りに「やめて…」とこられては世の男性たちも、口を開けたままポカーンとするしかなかっただろう。セクシーな黒いドレスと年齢の割には低い声、ためらいを表現する手の動き…キ・ケ・ンな匂いがステージから立ち込める歌が、梅雨時に売れた。

 フレンチポップ調のデビュー曲「ダニエル・モナムール」の甘えるような歌い方から一変し、セカンドシングル「経験」で男性の視線を釘付けにした辺見マリ。オリコンヒットチャート最高2位、レコード売り上げ30万枚を記録し、70年の新人賞レースをほぼ独走した。

 優等生の多かった、芸能界の一大勢力・渡辺プロの中では自他共に認める異端児。「経験」の振り付けもため息交じりの「やめて…」もセクシーな衣装も、実は自らの提案でプロデュースしたもの。「名もなき新人。売れるためには目立たないと、という気持ちがあった。ほかの日本人とは違う顔立ちを利用して、よりかっこよく、セクシーに迫った」。

 歌詞の内容もさることながら、その妖艶な雰囲気をかもしだした「経験」はNHKで放送禁止に。新人ながら紅白歌合戦に出場したものの、歌うことはできず、3枚目のシングル「私生活」を披露さぜるをえなかった。

 もう一つのテーマのかっこよさの象徴として、決して公の場では涙を見せなかった。新人賞を総ナメした際にも、微笑みをたたえる程度で新人歌手にありがちな受賞の感激で涙ボロボロということはなかった。「歌手がステージで歌えないというのはかっこ悪い」。自分のプライドが許さなかった。

 新人でありながら事務所に主張すべきことはきっちり話した。デビュー1年でレコード会社を移籍するという信じられないような決断も最後は自分で下した。

 「芸能界って信じられない。あまり長くいるところじゃない」が当時の口ぐせ。デビュー3年足らずで、歌手で俳優西郷輝彦と結婚し引退。一時芸能界から身を引いていたが、離婚後に本格復帰。さまざまな人生経験を経て、現在でも「経験」を歌い、あの絡みつくようなため息交じりの「やめて…」は健在である。

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