羽生善治九段 現役会長の矜持を見せる 王将戦挑戦者決定リーグ開幕

[ 2023年9月20日 05:00 ]

羽生善治九段
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 将棋の第73期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)挑戦者決定リーグは20日、東京都渋谷区の将棋会館で行われる羽生善治九段(52)―近藤誠也七段(27)戦で開幕する。11月22日の最終一斉対局までの2カ月間でトップ棋士7人が総当たりする、将棋界で最も過酷なリーグ。勝者は現在2連覇中の藤井聡太王将(21)=竜王、名人、王位、叡王、棋王、棋聖含む7冠=への7番勝負挑戦権を得る。

 前期挑戦者の羽生は序列1位という有利な立場で今リーグに臨む。

 日本中の注目を浴びた藤井王将との初7番勝負は2勝4敗で敗退したものの、全6局で異なる戦型を選択し、史上最強の王者にたっぷりと汗をかかせたのは記憶に新しい。その後も好調を維持し、5月には王位戦挑戦者決定戦に進出。6月以降は連盟会長に就任し、多忙な業務の合間に対局をこなす立場に立たされながらも王座戦と竜王戦の挑戦者決定トーナメントでは準決勝まで勝ち上がっている。会長就任時に「忙しい方がめりはりをつけながら活動できる」と話した通りの充実ぶりだ。

 2期連続の挑戦が実現すれば、1986年(昭61)に故大山康晴15世名人が中原誠名人に挑んだ第44期名人戦7番勝負以来となる、現役連盟会長のタイトル戦出場となる。もちろん戴冠100期への足がかりとしても重要なリーグだ。新たなトライが今日から始まる。

 ▽挑戦者決定リーグ 前期リーグ成績上位のシード棋士4人と1、2次予選を勝ち上がった3人の計7人による総当たり戦。優勝者が7番勝負(例年1~3月)に出場する。複数棋士が相星で並んだ場合は前年成績に基づく序列上位の2者によるプレーオフを行う。成績下位の3者はリーグから陥落し、翌期は2次予選に回る。会場は東西の将棋会館で、開局は午前10時。持ち時間は秒単位実測のチェスクロック使用で各4時間。

 《豊島将之九段・打倒藤井の筆頭格》
 過去2度の7番勝負経験がある豊島九段も有力な挑戦候補だ。竜王2期、名人、叡王、王位、棋聖各1期と通算6期のタイトル獲得歴を誇り、現在は無冠ながら名人戦・順位戦は7期連続してA級に所属。8月4日の王座戦挑戦者決定戦では藤井王将相手に159手の激闘を演じ、あと一歩まで追い込む名棋譜を残した。その健在ぶりは打倒・藤井の一員としても筆頭格。33歳と指し盛りで、リーグの主役を張るには十分だ。6期ぶりの挑戦権獲得を虎視眈々(たんたん)と狙っている。

 《永瀬拓矢王座・「覇権争い」継続へ》
 藤井王将の全8冠制覇に向けて、最後の「壁」になっているのが永瀬王座だ。現在進行中の第71期王座戦5番勝負は第2局を終えて1勝1敗。いずれも最終盤まで手に汗握る接近戦を演じており、第3局(27日、名古屋市)以降も目が離せない。王将リーグには3年前の第70期に初登場。5勝1敗で並んだ豊島竜王とのプレーオフを制し、渡辺王将に挑戦したが2勝4敗で敗れた。3期ぶりの挑戦権奪取で藤井との覇権争いを継続したいところだ。

 《近藤誠也七段・“4勝の壁”突破だ》
 3期連続4回目の王将リーグ。四段時代の第66期(16年)に初登場し、2勝4敗で陥落したが、羽生3冠から金星を奪って鮮烈な印象を残した。19年には名人戦・順位戦C級1組で藤井七段に後手番で勝利。この1勝は藤井の順位戦デビュー以来連勝を18で止めただけでなく、結果的に藤井の連続昇級を阻む衝撃的な白星だった。リーグ復帰した第71期以降は2年連続して4勝2敗の好成績をマーク。今回は4勝の壁を破って挑戦争いの域に迫りたい。

 《渡辺明九段・挑戦権狙いたい》
 タイトル獲得通算31期は歴代4位。うち王将は通算5期を誇る。前期リーグは1勝5敗で陥落の憂き目を味わったが、今季は2次予選を2連勝して即復帰を果たしたのはさすがの一言だ。この一年は苦闘の連続だった。2、3月の棋王戦では藤井に1勝3敗で失冠。続く4~6月の名人戦も1勝4敗で失い、19年ぶりの無冠となった。不振に陥ったというより、藤井の日の出の勢いにのみこまれてしまったのが実情だろう。「大きなことは言えませんが、挑戦権を狙いたい」とリーグでの目標を掲げた。

 《菅井竜也八段・王将リーグ初見参》
 17年に王位を獲得。タイトル経験のある名人戦・順位戦A級棋士の菅井だが、意外にも王将リーグは初見参だ。2次予選進出自体も今期が5年ぶり2度目。苦手感を持つ棋戦でようやく殻を突破し「凄くうれしい。とにかく入るのが難しいリーグなので」のコメントは実感だろう。今リーグただ一人の振り飛車党で、4、5月の叡王戦5番勝負では藤井叡王を大いに困惑させた。結果的には1勝3敗で奪取に失敗したが、王将戦で再戦の可能性はある。「挑戦を目標にしたい」と力強かった。

 《佐々木勇気八段・勇気流で上位進出》
 藤井王将のデビュー以来無傷の連勝記録を29で止めた、あの佐々木八段が王将リーグ初登場。今春には名人戦・順位戦でA級に初昇級し、名人戦でも藤井への挑戦権を狙う「遅れてきた大物」は今期の台風の目となりそうだ。8月25日の2次予選決勝では名人戦出場経験のある稲葉八段を激闘の末下し、ついにリーグ初進出を決めた。17年に藤井の連勝記録を止めた際には異様な雰囲気に慣れるため事前に藤井対局の現場を視察するなど、用意周到さが売り。「勇気流」の将棋で上位進出をうかがう。

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