市原悦子さん急死 82歳 心不全 虫垂炎発表直後の訃報 「家政婦」「日本昔ばなし」で独特の声

[ 2019年1月14日 05:30 ]

市原悦子さん
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 ドラマ「家政婦は見た!」(テレビ朝日)や「まんが日本昔ばなし」(TBS系)の声優など幅広く活躍した女優の市原悦子(いちはら・えつこ、本名塩見悦子=しおみ・えつこ)さんが12日午後1時31分、心不全のため都内の病院で死去した。82歳。千葉市出身。自己免疫性脊髄炎を発症し、リハビリに努めながら一時は仕事を再開させたが、本格復帰はならなかった。

 あまりに突然だった。語りを務めていたNHK「おやすみ日本 眠いいね!」が13日未明に放送され、市原さんが虫垂炎を患っていることと「こんな年になって盲腸になるなんてイヤだわ」とのコメントが発表された、その日の訃報。同局広報部は「番組放送時は市原さんが亡くなられたことを知らなかった」と説明。驚きと悲しみが広がった。関係者によると、昨年12月上旬に体調不良を訴えて検査を受けたところ、虫垂炎と診断されて入院。手術はせずに投薬治療を続け同21日には「おやすみ…」の収録に参加できるまでに回復した。年末年始は自宅で過ごしたが、再び体調を崩し今月5日に再入院。7日に予定していた収録は見送っており、その後に容体が急変した。19日からは女優観月ありさ(42)の主演舞台「悪魔と天使」に声で出演予定だった。

 16年11月には手足のしびれなど体調不良を訴え、自己免疫性脊髄炎と診断されて入院。18年3月に「おやすみ…」で仕事復帰を果たしたものの体調を崩すことが多かったという。18年のNHK大河ドラマ「西郷どん」のナレーションも降板していた。

 57年に俳優座に入団し「りこうなお嫁さん」でデビュー。71年に俳優座を退団、翌72年に番衆プロを設立した。75年には常田富士男さん(享年81)と2人で登場人物の声を演じ分ける「まんが日本昔ばなし」がスタート。昨年7月に常田さんが亡くなると「かなりショックを受けていた」(関係者)という。

 83年からは代表作の「家政婦は見た!」が始まった。「市原の家政婦か、家政婦の市原か」というほどの当たり役。市原さんは「女優は家政婦さんと同じく自分だけが頼りの仕事。大好きなシリーズです」と話していた。周囲によると「監督のOKが出ても自分が納得できるまで演技にこだわった。ただ、現場の空気がピリピリすることはなく市原さんがいるといつも穏やかでした」という。演技力の高さには定評があり、岩崎加根子(86)、渡辺美佐子(86)とともに「俳優座が生んだ三大新劇女優」ともいわれた。

 61年に舞台演出家の塩見哲さんと結婚。2度の流産で子供はいなかったが、おしどり夫婦として知られ、14年に夫に先立たれた。“おばさん然”とした演技とは違い、プライベートでは運動神経抜群でテニスやボクシング通。麻雀をこよなく愛し、酒を飲みながら俳優仲間と卓を囲むのが大好きだった。

 昨年他界した演出家の浅利慶太氏に「戦後の新劇界が生んだ最高の女優」と絶賛された市原さん。のぞき見する家政婦役の恐ろしいほどの演技力から、90年代後半には女子高生の間で“エツラー”と呼ばれCDや写真集を出すなどお茶の間にも愛された。サスペンスドラマでの役柄通り衝撃的な展開での悲報。世間を驚かせて旅立った。

 ◆市原 悦子(いちはら・えつこ、本名塩見悦子=しおみ・えつこ)1936年(昭11)1月24日生まれ、千葉県出身。57年に俳優座へ入団。59年に「千鳥」で芸術祭賞奨励賞、64年に「ハムレット」でゴールデンアロー賞新人賞を受賞した。今村昌平監督がメガホンを取った89年公開の映画「黒い雨」では日本アカデミー賞最優秀助演女優賞に輝いた。趣味は麻雀、旅行、散歩。

 ▼まんが日本昔ばなし 75〜94年まで全952回、1468話が放送された。全放送回の平均視聴率は18・1%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)で、最高は81年1月10日に記録した33・6%。05年には過去の放送分をデジタル処理し、11年ぶりにゴールデンタイムに復活した。

 ▼家政婦は見た! 83〜08年にテレビ朝日「土曜ワイド劇場」で26作放送。家政婦の石崎秋子(市原さん)が派遣されたエリート家庭でドロドロとした人間関係をのぞき見る内容。シリーズ最高視聴率は84年10月の2作目に記録した30・9%。97年には全11回の連続ドラマも放送。

 ◇市原悦子さん葬儀日程【通夜】17日(木)午後6時【葬儀・告別式】18日(金)午前11時【場所】東京都港区南青山2の33の20、青山葬儀所=(電)03(3401)3214【葬儀委員長】有限会社ワンダー・プロダクション代表取締役社長熊野勝弘氏

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