羽生竜王敗れる 27年ぶり無冠、通算100期目前で陥落

[ 2018年12月22日 05:30 ]

将棋の第31期竜王戦7番勝負で敗れ、対局を振り返る羽生前竜王。27年ぶりに無冠となった
Photo By 共同

 将棋の第31期竜王戦7番勝負第7局は21日、山口県下関市の割ぽう旅館「春帆楼」で2日目が指し継がれ、羽生善治竜王(48)が挑戦者の広瀬章人八段(31)に167手で敗れた。シリーズを3勝4敗で落とし、27年ぶりの無冠。勝てば通算獲得タイトル100期だったが終局後、天国と地獄が背中合わせの大一番を糧に出直しを誓った。

 秒読みに追い込まれた羽生はもう自陣を補強せず、逆にあと一手で広瀬王が詰む状態へ追い込んだ。これは「形作り」。いわば勝負の行方を相手に委ね、自ら首を差しだした。広瀬の継続手に自王の詰みを悟り、静かに投了を告げた。

 「結果を出せなかったのは自分自身実力が足りなかった。また力を付けてチャンスをつかみたい」

 1991年3月に棋王を奪って以来27年間保持し続けたタイトルを失い、無冠になったが表情や言葉に悔恨はない。ただ、今後の抱負を問われ「すぐには思いつかないです」。そう苦笑いし、続けた。「シリーズを反省してこれからにつなげたい」。第一人者の誇りは手放さなかった。

 戦型はシリーズ5度目の角換わり。過去4局の勝敗は2勝2敗で、最終局に両者の意地が交錯した。羽生世代の連盟会長・佐藤康光九段(49)は現地大盤解説会で、「これほど一局の勝ち負けで落差のある対局は初めてだと思います」とライバルを物語った。平成元年の1989年竜王位が初タイトル。平成時代はつまり羽生時代そのものだった。1895年、日清講和条約が締結された歴史的舞台で、棋史にも刻まれる名勝負になった。

 下関市では1996年の王将戦7番勝負で当時の谷川浩司王将から7冠目を奪取し、史上初のタイトル独占(現在は8冠)を達成した。同じく6冠で前年も谷川に挑み、3勝4敗で屈して1年後、6冠全てを防衛する離れ業を演じて舞い戻った大舞台だった。

 その対局会場「マリンピアくろい」は翌年採算悪化で閉鎖、研修施設で生まれ変わる。当時建立した「七冠達成之地」の記念碑が偉業を今に伝える。22年後、本州最西端の街は羽生にとっての再出発の地になった。

続きを表示

この記事のフォト

2018年12月22日のニュース