藤井七段 16歳2カ月 最年少新人王 31年ぶり更新「優勝という形で卒業できてうれしく思う」

[ 2018年10月18日 05:30 ]

第49期新人王戦決勝3番勝負の第2局で勝利し優勝、同棋戦の最年少記録を31年ぶりに更新した藤井聡太七段
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 将棋の最年少プロ棋士・藤井聡太七段(16)が17日、大阪市の関西将棋会館で指された新人王戦決勝3番勝負の第2局で、奨励会に所属する出口若武(わかむ)三段(23)を105手で破り2連勝で初優勝した。新人王最年少記録を、16歳2カ月で31年ぶりに更新。2月の朝日杯将棋オープン戦に続く2回目の棋戦Vに花を添えた。

 午前10時の対局開始からわずか5分後、藤井はカバンから突如大きなマスクを取り出して口元を覆った。「先週末に風邪をひいてしまって…」。午後3時の対局終了まで終始苦しげだった。

 終局後には「ほぼ治っているので影響はなかった」と語ったものの、そのコメントもやはり鼻声。質疑応答に応える姿も少し痛々しかったが、それでも勝利への執念には影響を感じさせなかった。

 序盤から新手を繰り出す積極果敢な出口に対し、藤井は7歳下ながらプロ棋士の貫禄を見せ、落ち着いた指し回しで圧倒した。エントリー時の四段から七段にスピード昇段し、新人王戦は規定によりこれが最後。「優勝という形で卒業できてとてもうれしく思う。これを期にますます活躍できるよう頑張りたい」。羽生善治竜王(48)や佐藤天彦名人(30)らも獲得し、トップ棋士への登竜門とされる“新人王”の称号獲得を素直に喜んだ。

 史上最多の29連勝をはじめ、次から次に新たな歴史を打ち立てる新記録ホルダーでもある藤井。今回も16歳2カ月で制し、森内俊之九段(48)が持っていた17歳0カ月の最年少記録を更新。その伝説にまた新たな1ページを書き加えた。ただ、新人王戦は若手対象という条件付きの棋戦。全棋士が参加する“格上”の朝日杯をすでに制している藤井の優勝は、ごく順当とする見方もある。他の棋士からは「タイトルをすでに狙える」という声も数多く聞かれる。

 3局以上の番勝負を初めて経験。藤井は「素晴らしい環境を用意していただいた」と感謝。8大タイトル戦については「また、そういう舞台に立てるように頑張りたい」と応えた。これで通算成績は94勝17敗。今年度中に迎えるであろう100勝へカウントダウンに突入した。

 ▽新人王戦 1970年創設の若手棋戦。現在の出場資格は開幕年の10月1日時点で(1)26歳以下の棋士(2)六段以下の棋士(タイトル戦経験者を除く)(3)女流棋士成績上位4人(26歳以下)(4)赤旗名人戦優勝者(アマ)(5)前期奨励会三段リーグ成績上位者。40人がトーナメント方式で戦い、決勝は3番勝負で行う。資格を満たせば何度でも出場でき、森内ら3人が3度優勝。タイトル保持者が優勝した年もある。

 ◆藤井七段の快挙

 ▽最年少プロ入り 16年10月、史上最年少14歳2カ月でプロに。12月のデビュー戦で前記録保持者の加藤一二三・九段に勝利。

 ▽最多連勝 17年6月、デビューから無傷で公式戦新記録の29連勝。

 ▽スピード昇段 18年2月の順位戦でC級1組への昇級を決め、中学生で初の五段昇段。

 ▽羽生破り優勝 18年2月の朝日杯オープン戦で羽生善治竜王らを破り中学生初の棋戦優勝と最年少六段昇段。

 ▽記録4冠 17年度の記録全4部門(対局数、勝数、勝率、連勝)を最年少で独占。

 ▽最年少昇段 18年5月の竜王戦で2期連続昇級を決め、最年少で七段に昇段。

 ≪昼食はがっつり≫“勝負メシ”となる昼食は、会館近くにある「やまがそば」のお弁当(830円)を頼んだ。二重のお重の上段に弁当、下段に温うどんが付いたボリュームたっぷりセット。風邪気味ということで、あえて“がっつり系”で体調回復を目指したのかもしれないが、午後2時に提供されたおやつのケーキには手をつけなかった。藤井は「局面が切迫していたので盤上以外にはなかなか…」と苦笑いで説明した。

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