藤井七段 女流四冠下す “1分将棋”から逆転 高校生プロの貫禄示す

[ 2018年8月25日 05:30 ]

第90期棋聖戦1次予選で里見香奈女流四冠(左)を破った藤井聡太七段館
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 将棋の藤井聡太七段(16)が24日、大阪市の関西将棋会館で指された8大タイトル戦の一つ、第90期棋聖戦1次予選で里見香奈女流四冠(26)を82手で破った。両者の公式戦での対局は初めて。最年少記録を次々と塗り替える天才高校生棋士と女流第一人者の“黄金カード”は、高校生プロが貫禄を示した。

 29連勝の最多記録を持つ藤井と、女流最多の21連勝の記録を持つ里見の対戦。里見が6月から今月にかけて対男性棋士戦で史上最多タイとなる3連勝を記録したこともあり、開局前から取材陣約50人が駆けつけるなど注目の高さをうかがわせた。

 序盤は得意戦法の「先手中飛車」に構えた里見にいい形に持ち込まれた藤井が長考を連発。持ち時間を先に使い果たして早々に1分将棋に追い込まれ、記者控室では「“ジャイアントキリング”があるかも」という声も漏れたが、持ち前の深い読みで逆転した。

 女流棋士と初の公式戦となった藤井は「序盤はうまく指された。手ごわい相手と思った」と淡々とした表情で振り返った。

 男性棋士との比較について「対局する上での気持ちは全く変わらなかったですし、実際に対戦しても本当に変わらない実力を感じました」と棋力を認めていた。

 あと一歩及ばなかった里見は「今日の対戦を楽しみにしていた。中盤、終盤で間違ったのが悔やまれる」と無念の表情を浮かべた。対局中に使用した扇子が藤井の師匠である杉本昌隆七段(49)の「不撓(ふとう)不屈」という揮毫(きごう)が印刷されたものだったため、理由を聞かれたが「かばんの中に1本入れているのがたまたま…。特に意味はありません」と苦笑い。この日は藤井にはね返されたが、終局後の感想戦では見せ場たっぷりだった内容を仲良く振り返るなど、満足感もにじませていた。

 2人は16年7月にプロ棋士養成機関「奨励会」の三段リーグで対戦し、その時は藤井が勝利していた。

 《“出雲のイナズマ”里見女流四冠》里見は島根県出雲市出身。鋭い攻めから「出雲のイナズマ」とも呼ばれ、6つある女流タイトルのうち女流王座、女流名人、女流王将、倉敷藤花の4つを保持。残るは女王と女流王位の2つとなっている。タイトル獲得は計31期。

 2004年10月、中学1年で女流2級となり、女流プロ棋士に。振り飛車党で、早くから“天才”と呼ばれ将来を嘱望されていた。09年の新人王戦では稲葉陽四段(当時)を破り、女流棋士が公式戦で男性棋士に勝利した史上最年少記録(16歳10カ月)を更新。13年には史上初の5冠(女流王座を除く)を達成するなど輝かしい成績を収めたが、翌年には体調不良のため1年間休場。復帰後は破竹の勢いで勝ち進んだ。女性初のプロ棋士を目指し男性棋士に交じり奨励会「三段リーグ」に挑戦していたが、成績は振るわず年齢制限(26歳)のため18年2月に退会した。男性棋士との対戦成績は7勝19敗(未放送のテレビ棋戦を除く)。

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