「陸王」大規模エキストラの裏側 異例10万人超えも 観衆にCG使わぬ理由は“熱狂”

[ 2017年11月25日 10:00 ]

大勢のエキストラに囲まれて演技する(左から)山崎賢人、寺尾聡、光石研、役所広司、市川右團次(C)TBS
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 俳優の役所広司(61)が主演するTBS日曜劇場「陸王」(日曜後9・00)は、経営危機にある創業100年以上の老舗足袋業者「こはぜ屋」が会社存続を懸け、ランニングシューズの開発に挑む企業再生ストーリー。作品の“見せ場”マラソンシーンで動員するエキストラの数は異例の大規模となり、その迫力満点の映像が話題となっている。CG処理を行わない“リアル”なエキストラの映像がもたらす効果と撮影時の裏話を番組プロデューサーの飯田和孝氏に聞いた。

 ◆延べ10万人超えも…前代未聞!異例の大規模「今後ないかも」

 第1話のハイライト「豊橋国際マラソン」のシーンでは3日間で約1万人のエキストラが参加。第3話「熊谷シティマラソン」は約5000人、第5話「ニューイヤー駅伝」にも約7000人が集まった。ドラマ制作に携わって12年が経つ飯田氏も「スポーツイベントなどを題材にする作品自体は多くありませんが、今までで間違いなく最大規模。1000人規模が当たり前で3桁だと少ないと感じることもあります。これだけのエキストラさんを集めるのは今後ないかもしれないです」と、その規模の大きさに舌を巻く。20日まででのべ6万人以上が参加。「もしかすると、10万人に達するかもしれません。目指したいですね」と大台も視野に入ってきている。

 ◆「本当に集まるのだろうか?」心配は杞憂に

 日没の時間を考慮して撮影が早朝スタートになることも少なくない。平日にも撮影は行われる。それでもなぜ、ギャラが発生しないエキストラがこれだけ多く集まるのか。当初はスタッフの中にも「本当に集まってくれるのだろうか」など心配の声があったという。しかし、ふたを開けてみれば応募が殺到。飯田氏は「地域とのつながり」と「出演者の協力」を要因に挙げた。

 同局で池井戸潤氏の作品をドラマ化するのは「半沢直樹」(2013年10月クール)「ルーズヴェルト・ゲーム」(14年4月クール)「下町ロケット」(15年10月クール)に続き4度目。そのすべてで福澤克雄氏が監督を務めてきた。「陸王」第1話の舞台となった愛知県・豊橋市では「ルーズヴェルト・ゲーム」の野球大会のシーンでもロケをした縁があり「豊橋市と“福澤組”のつながりで、地元の方々にビラを配ってもらったり、交通整理をしてもらったり、今回も積極的に協力していただいています。本当にありがたいです」と感謝しきりだ。福澤監督の周りを地域の子どもたちが取り囲み、即席の写真撮影会が始まったことがあるなど“福澤組”はすっかり地域に溶け込んでいる。

 また、「こはぜ屋」のランニングシューズを履く「ダイワ食品」陸上部の長距離ランナー・茂木裕人を演じる竹内涼真(24)ら若手出演陣がSNSなどで積極的に行っているエキストラ募集呼びかけの効果も大きいという。「本当はスタッフが出演者の皆さんに告知をお願いすると思うんですけど、何も言わなくてもそういうことを率先してやってくれています。『一緒に作品を作ろう』と本当に1人の共演者のようにエキストラの方々に呼びかけてくれています」と感謝を口にした。

 ◆大人数でも撮影では集中力発揮 出演者とエキストラの一体感

 何千人ものエキストラが一度に演技をする。それを指揮する難しさは計り知れないが、撮影中のエピソードに話を向けると飯田氏は「実はもっと苦労すると思いました」と笑顔を見せた。「おしゃべりをしている方々も撮影が始まりそうになると、一気に緊張感を高めて『よし、やろう!』となってくれるんです。まさに1人の出演者として参加してくれています」と目を細め「役所さんはじめ、出演者の皆さんが直接エキストラの方々に感謝を伝えたり、声かけをしたりして、心を1つにしようとしてくれています」と明かした。

 第6話(26日放送)の撮影中には、「ダイワ食品」陸上部のベテランランナー・平瀬孝夫役の和田正人(38)がカメラカーに乗って10分近くエキストラに“応援演説”する一幕も。「何度も何度も同じシーンを撮るので『またかよ』となると思うんですけど、そういう声かけのおかげもあって、文句も言わずにやってくれています」と出演者とエキストラの一体感に脱帽した。

 ◆“人足し”CG合成処理なし リアルな観衆がもたらす“熱狂”

 「陸王」では “人足し”と呼ばれるCG合成処理は行われておらず、全て“リアル”な観衆で映像が作られている。「CG処理はお金も時間もかかります。何より、CG処理するためには何度もエキストラの方々に場所を移動して撮影させてもらう必要があるので、皆さんのテンションが下がってしまいます。熱狂を表現する上でテンションは大切ですから」と狙いを説明。また、「映像が迫力あるものになるのはもちろんですが、俳優さんのテンションも違います。やはり大歓声は気持ちを高めてくれますし、『エキストラさんに演技を助けてもらう』ということもあると思います。実際のマラソンランナーも大観衆の中を走りますから、より本来の姿に近い熱狂的な映像をお届けできるのでは」とCGを使わない利点を挙げた。

 「陸王」は26日放送の第6話からいよいよ後半戦。「こはぜ屋」をライバルとして認め、あらゆる攻撃を仕掛けてくる大手シューズメーカー「アトランティス」。池井戸作品特有の“対決”からも目が離せないが、出演陣の好演を後押しするエキストラの存在にもぜひ注目してみたい。

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