高畑淳子版「雪まろげ」は完成途上 少なかった準備時間 真骨頂はこれから

[ 2016年9月28日 10:05 ]

24日、舞台「雪まろげ」の初日を終えて関係者にガードされながら車に乗り込む高畑淳子

 高畑淳子主演の「雪まろげ」の初日公演を観劇した。長男が起こした一連の騒動の最中に、心身ともに極限状態にありながらも稽古をして、座長として作り上げた作品。その公演を無事に開幕させたことには素直に賞賛したい。

 1980年に初演を迎えた故森光子さんの代表作の1つ。青森・浅虫温泉を舞台に温泉芸者の1つの嘘が大騒動に発展する人情喜劇で、元々は森さんが「嘘つき女を演じたい」と作家の小野田勇氏に伝えたところ、小野田氏が森さんをイメージして脚本を仕上げたという。陽気でコミカルな性格だが、どこかか弱さやはかなさを漂わせている主人公の夢子。森さんの雰囲気ともぴったりで、80年代屈指の大衆舞台となった。

 今回の再演は昭和の香りを残しながらも、世相に合わせて笑いの割合も多めに設定しているように思えた。共演のしずちゃんに暴漢をボクシングで倒させたり、柴田理恵に「どこで週刊文春が見ているかわからない」と言わせたり、時代に合った笑いを仕掛けて客席の大爆笑を誘っていた。

 笑いの数も多くて楽しい舞台だったのは間違いないのだが、公演後に記者仲間と話していると「おもしろいんだけど、疲れたね」という意見が多かった。森さんの「雪まろげ」を見たことがあるベテラン記者は「森さんの夢子はユーモアにあふれているんだけど、切なくなるくらいかわいい時もあるんだよね。そういうのがなかったかなぁ」と感想を語った。

 終演後、無言で迎えの車に乗って会場を後にした高畑を見送りながら、感情の振り幅が大きすぎて、そのつなぎにゆとりがなかったのが舞台を見ていて疲れを感じた原因かな、と思った。笑わせたり、泣かせたりという観客の感情に大きくアプローチする演技は迫真で、こちらも思わず引き込まれる。ただ、それ以外のちょっとした仕草や、共演者への呼び水となるセリフなどにきめ細やかさが足りない気がした。

 何とか間に合わせたというのが実情なのだろう。騒動の状況はめまぐるしく変わり、長男が釈放されて一段落したのは今月9日で、公演初日まで約2週間しか残されていなかった。高畑の舞台女優としてのキャリアは40年以上を誇るとはいえ、主人公のキャラクターにオリジナルの肉付けをする時間はあまりにも少なかった。

 長男を巡る状況は一応の落ち着きを取り戻し、高畑の疲弊した心身も少しずつ回復へ向かうはずだ。東京公演は来月19日まで。その後は全国ツアーとなり、公演は12月まで続く。後半の公演では高畑の真骨頂を見せてもらいたい。(記者コラム)

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