「HEAT」2・8%余波で注目のドラマ…35年前と今が重なる

[ 2015年8月16日 12:00 ]

「ピーマン白書」打ち切りを伝える1980年10月24日のスポニチ紙面

 今月11日に放送されたフジテレビ「HEAT」(火曜後10・00)第6話の平均視聴率が2・8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。テレビ東京を除く民放キー局のGP(ゴールデン・プライムタイム)帯(午後7~11時)の連続ドラマで、今世紀最低を記録したTBS「夫のカノジョ」(2013年10月期)の3・0%を下回った。“異例の事態”が発生した裏で、あるドラマに脚光が集まっていた。

 「HEAT」低迷の影響で、インターネット上で話題になったのは1980年10~11月に放送されたフジテレビの学園ドラマ「ピーマン白書」(土曜後8・00)。平均視聴率2%台を記録し、放送1カ月で早々に打ち切りが決まったという「伝説のドラマ」。テレビが娯楽の全盛だった時代の数字としては、にわかには信じ難かった。

 スポニチ本紙をさかのぼってみると、1980年(昭55)10月24日付の芸能面で「ピーマン白書」の打ち切り決定が報じられていた。

 TBS「3年B組金八先生」以外、この年の秋ドラマが全般的に低迷していることを伝える芸能面トップ記事の中で「最も惨敗を喫したのがフジ『ピーマン白書』で、土曜の夜8時という“1等地”で第1回=5・3%、2回=2・6%、3回=2・6%とメロメロ。テレビマンユニオンの制作で、落ちこぼれの中学生が受け入れてくれる小学校を求めて放浪するというユニークな発想の学園ドラマとして狙ったが、この低い数字に26回の予定を早ければ11月いっぱい(9回)で終了させ、その後は単発ドラマでしのぐ」とある。

 記事は「作者(佐々木守)の意図が、見る側に伝わらない。作る側の頭の使い過ぎが敗因だと思う。一度、視聴者離れしたドラマはテコ入れしてもムダで、早々に打ち切りを決定した。学園もの、刑事ものなど、どこかが当てると、すぐ同じ企画を立てるテレビ界の悪い傾向が10月改編でも目立った。テレビは常にクリエイティブで、新しい素材を番組にしなければと、大いに反省している」と日枝久編成局長のコメントを紹介している。

 「ピーマン白書」の同時間帯にはTBS「8時だョ!全員集合」(土曜後8・00)があった。「ピーマン白書」第1話~第3話と「8時だョ!全員集合」の平均視聴率を比べると、5・3%:32・5%、2・6%:30・0%、2・6%:31・9%(「8時だョ!全員集合」はニールセン調べ)。全く歯が立たなかった。

 記事は「1つヒットすると模倣ドラマで後追いする傾向、俳優もスターシステムでほぼ同じ顔ぶれなら、放送作家も一部の売れっ子ベテランでやりくりするなど、アメリカのように手間ひまをかけられない現状。こんな要因がドラマの地盤沈下になって表れたというのが一般的な見方。民放の宣伝マンは『視聴者の選択眼がシビアになった。当然、おもしろければ当たるが、では何がおもしろいか、つかめていないのが現状だ』という」と当時のドラマ低迷の原因を分析する。

 本当に35年前の記事なのか。2015年の今に重なるように思える。

 さらに、興味深いくだりがあった。

 「また、フジは東海テレビ制作の目玉番組『氷山のごとく』も平均6%と低迷。もともとドラマが弱く、全体の視聴率も低迷気味で、この夏、大人事異動と機構改革を行った」

 昨年6月、フジは全社員約1500人の3分の2に当たる1000人の人事異動を断行。この大異動がすぐに思い浮かんだ。

 昨年は「HERO」「ドクターX」のヒットがあったが、今年に入り、ドラマの視聴率は各局低迷。時代は繰り返すのか――。そう感じた今回の「HEAT」余波だった。

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