ピース綾部「格差キャラ」への葛藤と決意 揺るぎない又吉へのリスペクト

[ 2015年7月22日 11:40 ]

今月16日、芥川賞を受賞し、報道陣の質問に答える又吉直樹の隣で傘を持つ相方の綾部祐二

 日本中を震撼させた、「ピース又吉、芥川賞受賞」のニュース。快挙の裏で、相方の綾部祐二(37)は「格差キャラ」とイジられる日々だ。

 明るく笑いに変える実力はさすが。でも16年間、しかも圧倒的に下積みが長い芸人生活を二人三脚で歩んできた人間が、一夜にして「大先生」ともてはやされる。複雑な胸中は想像に難くない。

 又吉の処女作「火花」が芥川賞にノミネートされた6月ごろから、綾部は公の場で「格差キャラ」を貫いている。自身を又吉の「付き人」「アシスタント」と称し、もちろん敬語も忘れない。

 でも、綾部は20日、出席したイベントで思わず、本音を口にした。

 後輩が「芥川賞作家が近くにいると思うと、緊張感が増しました」と話した後。「おまえらの8億倍、感じてるよ」。

 芸人として先に脚光を浴びたのは綾部だった。「熟女好き」キャラで注目され、的確なツッコミを入れる能力はバラエティー番組で重宝されてきた。立場が逆転したという思いもあるのだろう。「初めて会ったとき、あいつ18歳の青年だったんだぜ」。21日に「パンサー」向井慧(29)ら後輩10人らが催した又吉のお祝い会にも、呼ばれてなかったりする。言いしれない葛藤が、その言葉から垣間見える。

 でも、綾部はそんな、小さい思いにがんじがらめになっていない。むしろ又吉の快挙を新しい笑いを変えようという、どん欲さにあふれている。

 それを裏付けるのが、芥川賞受賞前に又吉がある取材で発した言葉だ。

 「(「火花」が)5月に三島由紀夫賞に落選したとき、だいたいの人は“取れなくてもすごい”とか言ってくれたんですよ。でも綾部にだけは、“取らなきゃ意味ねぇんだよ。ビジネスになんねぇだろ”と言われた」

 綾部は「火花」によって変化するであろう、2人の関係性と今後の立ち位置を、シビアに考えていたということだ。

 でも、綾部の本音はそれがすべてではない。考えてもみよう。「打算」や「卑屈」から、快い笑いが起きるはずもない。関係者は「綾部は文学を全く解さない人物だが、又吉の快挙は自分のことのように喜んでいる」と証言する。相方への揺るぎなきリスペクトが「格差キャラ」の礎なのだ。

 そのリスペクトの強さを19日、目の当たりにした。受賞後初めてコンビでファンの前に立った千葉市内での公演。後輩数人を交え、マシュマロをラケットで打ち地面につかないようリレーし、最後に又吉が食べるゲームをした。なかなか成功しない中、迎えた数回目。綾部が落ちそうなマシュマロを華麗に拾い上げるや、「先生!」と叫び、数メートル先にいる又吉に投げたのだ。とっさの時なら「又吉!」だろう。もはや、綾部にとって又吉は「先生」なのだと妙に感心させられた。

 ちなみに、投げられたマシュマロは見事、又吉の口にホールインワン。見事なコンビネーションだった。関係に変化こそあれど、芥川賞に惑わされることなく「ピース」は今後も人気コンビであり続けるだろう。

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2015年7月22日のニュース