松重豊が考える役者道とは 「役が入り込む入れ物にすぎない」

[ 2015年5月17日 12:08 ]

渋みを利かせた男の顔、松重豊
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 実力派俳優、松重豊(52)が存在感を増している。朝ドラでもヤクザ映画でも変幻自在に溶け込み、独特の味を出す。どの役も本人そのものに見え、素顔が見当つかない。大学時代に芝居を始めて30年以上。演じた役柄は数知れず、持論は「役者は役の人物が入り込む入れ物にすぎない」。己を捨てて“役者道”に精進している。

 語り口は静かでムダな相づちも打たず、たたずまいは「静」。己を律する修行僧のような雰囲気だ。4行詩でつづるブログのタイトルも「修行が足りませぬ」。「役者の仕事はお坊さんの修行のように日々鍛錬と自制の繰り返し。到達点はなくて、死ぬまで分からない謎に向かう決意があるかどうかが一番大事だと思う。“きょうの芝居もまだダメだな”という日々を続けていかないと、すぐ終わりがくるぞという戒めです」と解説した。

 明治大学文学部で演劇学を専攻し、東京サンシャインボーイズや蜷川スタジオで研さんを積んだバイプレーヤー。近年は連続ドラマの出演が途切れず、1月期にフジテレビ「デート」でヒロインの優しい父親を演じたかと思えば、現在は日本テレビ「Dr.倫太郎」(水曜後10・00)でクールな医師の顔を見せている。

 「長いこと役者を続けていると、自分の本当の性格が分からなくなるんですよ。“そういう部分もあります”じゃないといろんな発注に応えられない。僕は役の人物が入り込む入れ物にすぎないという感覚です」

 連ドラ初主演作のテレビ東京「孤独のグルメ」の反響は大きかった。主人公が飲食店にふらりと立ち寄り、注文までの逡巡(しゅんじゅん)や料理の味わいなど胸の内を独り語りするシンプルな内容だが、12年から2年間でシリーズ4作も放送。“うまそうに食べる顔”は視聴者の食欲をそそり、食品CMのオファーも相次いだ。

 それもそのはず。収録前日の夜から食事をセーブする徹底ぶりで「一口目はそりゃうまいですよ。お客さんに“こういうのあるよね”って思わせることが役者の力であり喜び。そこに向かうまでは自分を捨てるしかない」とリアリティーを追究する。その姿勢はまさに“役者道”に精進する修行僧。「本来俳優は実体がつかめないものじゃないとよくない。つかみどころがなく、訳が分からない存在で居続けたい」。

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