松重豊「二度と監督はやらない」 甲本ヒロト主演で幻の映画あった

[ 2015年5月17日 12:15 ]

笑顔を見せる松重豊

 実力派俳優、松重豊(52)が存在感を増している。朝ドラでもヤクザ映画でも変幻自在に溶け込み、独特の味を出す。どの役も本人そのものに見え、素顔が見当つかない。大学時代に芝居を始めて30年以上。演じた役柄は数知れず、持論は「役者は役の人物が入り込む入れ物にすぎない」。己を捨てて“役者道”に精進している。

 一気に表情を緩めたのは愛犬の話になった時。4年前、長男の高校合格祝いで飼い始めたメスのボストンテリア「チャイ」で「可愛いですよ。生まれて初めて入ったペットショップで“お抱きになりますか?”って言われて、運命の出合いなんてあるわけねえだろと思ってたけど、まんまと引っかかりました」と、文字通り相好を崩した。

 家族は大学時代に知り合った妻と、大学生の長女、長男。「自分の顔が怖いっていう自覚はないけど、娘が怒ると怖い。遺伝ですね。申し訳ないけど」と笑う。家族仲がよく、私生活は“孤独のグルメ”ではない。「実家の母親も呼び寄せているので“大家族のグルメ”です。独り語りじゃなく“これうまいね”っていちいち言う。家族が一番かけがえのない場所で、よりどころです」。

 演劇の道に進んだのは、高3の文化祭で映画を撮り監督業に興味を持ったことがきっかけ。大学時代には友人のつながりで、法政大生だった「ザ・クロマニヨンズ」の甲本ヒロト(52)と知り合い、中華料理店で一緒にバイトし、甲本主演の8ミリ映画も撮影した。

 監督の夢については「ヒロトを使って撮った映画が資金不足で頓挫してしまった。ヒロトのためにも二度と映画監督はやりません」と苦笑い。生活のために俳優を断念しさまざまな仕事をした時期もあり「生まれ変わってこの仕事をやるかと聞かれたら“怖くてできません”と言います。子供たちにもおすすめしないと口酸っぱく言ってます」。

 髪は強烈な癖毛。湿度などを考慮して自分でセットしており「今となってはチャームポイントになるのかな。コンプレックスだった部分と愛し合えるようになったのは最近」としみじみ。「あんまりカチっと作るとカツラ疑惑が出ちゃうね」とおどけ、おちゃめな一面も見せた。この顔はリアルか、芝居か――。「俳優・松重豊」を演じていたかもしれない。

 ◆松重 豊(まつしげ・ゆたか)1963年(昭38)1月19日、福岡県出身の52歳。80年代は舞台で活動し、92年に「地獄の警備員」で映画デビュー。08年に「しゃべれども しゃべれども」で毎日映画コンクール男優助演賞を受賞。公開中のアニメ映画「百日紅~Miss HOKUSAI~」で声優初挑戦。主な出演作は映画「アウトレイジ ビヨンド」(12年)、NHK連続テレビ小説「ちりとてちん」(07年)、フジ「HERO」(14年)など。血液型AB。

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