小百合 初のプロデュース業、撮影終わってから痛感した「これは大変」

[ 2014年10月7日 10:00 ]

自らが企画・主演した「ふしぎな岬の物語」について語る吉永小百合

 今週から火曜に芸能人やタレントの核心、真相に迫るインタビュー「CUT IN」がスタートします。第1回は吉永小百合(69)が登場。寄り添うことの大切さを丹念に紡いだ「ふしぎな岬の物語」(監督成島出)を持ってモントリオール世界映画祭に参加し、2つの勲章と大きな手応えをつかんで凱旋。W受賞を祝って闘病中の坂本龍一(62)からも花が届いた。4日後に迫った日本公開を前に初めてプロデュース業に挑んだ吉永が熱く語る。

 審査員特別大賞とキリスト教関連団体が人道的な立場から優れた作品に贈るエキュメニカル審査員賞。ダブル受賞はむろんうれしかったが、映画に込めた思いが世界の人々に届いたことが何より誇らしかった。

 公式上映の翌朝(8月31日)の出来事。吉永は宿泊先ホテルのプールで泳いだ。髪の毛を濡らしたまま帽子をかぶり、トレーニングウエアの上下を着てエレベーターに乗り込むと、同乗した女性が話しかけてきた。

 「凄く良かったわ」

 メキシコの女性記者だった。「お化粧もしていない私の顔をまじまじと見てそう言ってくださったんです。それがとってもうれしくって。モントリオールに行けて良かったと、あらためて思います」

 追加も組まれた計4回の上映会は掛け値なしに反応が良かった。喫茶店に盗みに入った男(片岡亀蔵)に「ドロボーさん」と呼びかけ、コーヒーを振る舞いながら親身になって話を聞くシーンには観客も心を熱くし、吉永に恋心を抱く常連客(笑福亭鶴瓶)の顔がアップになると大爆笑。そして母親を亡くした女児に「大丈夫、大丈夫」とおまじないをかけながら抱きしめる場面にはすすり泣きが漏れた。

 「字幕をご覧になりながらの観賞。文化や習慣の違いもあって“ここは分からないんじゃないかしら”と思うところも受け止めてくださって。阿部(寛)さんと2人でびっくりしてました」

 帰国した成田空港でもサプライズが待っていた。「鶴瓶さんが奥さまと2人で空港に来てくださったんです」。5年前、西川美和監督(40)の「ディア・ドクター」で同映画祭に参加しながら、無冠に終わった鶴瓶は「敵を討ってくれた」と9月16日のジャパンプレミア(千代田区・東京国際フォーラム)でしてやったりの顔を見せた。

 村治佳織(36)が奏でるギターの音色が感動に拍車をかける。「本当にいい形で参加してもらいました」としみじみ話したが、彼女への依頼はプロデューサーとしての大きな仕事だった。

 「村治さんはデッカという英国の名門レーベルと契約しています。ゲストで1曲だったら可能性もあるということでしたが、無理を言って全編やっていただきました」

 クライマックス。吉永扮する岬カフェの女店主がおいっ子役の阿部寛を前に長々と独白する場面がある。「映像と私のセリフを聞きながらアドリブのような形で弾いてくださったんです」

 64年公開の主演映画「潮騒」もギター1本が映画を彩った。「それが好きで、いつか、ギターと映画音楽の組み合わせが考えられないものか?と思っていたんです。一俳優ではせんえつになっちゃいますが、たまたま今回、私プロデューサーということになったので!」

 モントリオールで「完璧」と話題になったフランス語。「村治さん、一昨年にNHK・Eテレのフランス語講座に出演していました。高校卒業後に2年間、留学してたんです。それで特に難しいRとLの発音の違いなどをアドバイスしてもらったんですよ」

 上映会ではあいさつ文をしっかり頭に叩き込んでいた。しかし、授賞式では“空振り”に終わることも考えて、一応メモを手にしていただけだったという。それが2つの賞。「舞台に上がる間にメモを取り出し、“ゆっくり言えば間違いない”と自分に言い聞かせてあいさつしたんです。セレモニーの模様をニュースなどで見た知人から“本当にうれしそうだったわね”と言われましたが、あれは間違わずにうまく言えたことがうれしかったので…」と意外な裏話も打ち明けて笑った。

 ライフワークにしている原爆詩の朗読会。その趣旨に賛同して伴奏してくれたこともある村治を妹のようにかわいがっている。「2人で坂本龍一さんにお見舞いのお手紙を書いたんです」

 7月に中咽頭がんを公表し、米ニューヨークで闘病中の坂本も朗読会でジョイントした仲間。映画と同様、こんな“つながり”が裏側に隠れていた。

 「村治さんもご病気(舌腫瘍)を克服したからこそ、その手紙は坂本さんの胸にも届いたでしょう。私たちみんな、坂本さんが一日も早くお元気になられるようにと、そんな思いでいます」

 映画祭の帰途、ニューヨークに寄って見舞うことも考えたそうだ。「でもかえってご迷惑になってもいけないし」と遠慮したが、帰国した吉永を追いかけるように坂本から花が届いた。格別なお祝いだった。

 エンディングロールに「企画 吉永小百合」の文字が出てくる。50年を超える女優人生で初めての体験だ。

 「成島監督と原作探しから始め、たくさん読みました。未来に向かって希望が持てるような映画にしたいという願いが強かったのですが、暗い話が多かったんです」

 やっと巡り合ったのが森沢明夫氏の「虹の岬の喫茶店」(幻冬舎)だった。「でもオムニバスでしたので、タテ糸を通して軸を作るのは大変なことだろうと思いましたが、監督たちが素敵な本にしてくださいました」

 阿部や鶴瓶らに手紙を書いて出演を依頼するなどキャスティングにも尽力した。

 「雲の湧くのはあすこいら、虹の根もともあすこいら。いつかお舟でゆきたいな、海の果てまでゆきたいな」

 映画のラスト、金子みすゞの詩を朗読する吉永の声が入る。これも自らのアイデアだった。

 創意工夫は何より作品のため。そんな中で最もプロデューサーの大変さを痛感したのは実は撮影が終わってからだったと告白する。

 出番が終われば「ハイ、さよなら」というわけにはいかない。「ラッシュ(編集前の試写)を1週間に5回も見ました。どうしても2時間を切る作品にしようと、みんなで“ここを、あそこを”と詰める作業をしたんです。1週間に5回なんて一度もなかった。監督やスタッフは“そうやって仕上げに向かっていくんだ”と知り、これは大変なことだと思いました」

 完成して、あらためてスタッフやキャストへの感謝の念が募る。「みんながあったかい気持ちになる作品にしたい。出てくださった俳優の皆さんが、そういう気持ちで支えてくれました」

 全国キャンペーンを展開中の吉永は「派手な映画ではありませんが、人と人のつながり、絆みたいなものを映画館で感じていただければと思います」と“総仕上げ”に忙しい日々を送っている。

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