[ 2010年4月2日 06:00 ]

楽器と一体化したかのような自然体の演奏を繰り広げた樫本大進

 第2部のプログラムはソナタ第3番とパルティータ第2、3番。私が樫本大進のバッハを聴いていて、まず感じたのは30歳とは思えないほど肩の力が上手く抜けている演奏だった、ということです。もちろん、天賦の才に恵まれているのはいうまでもありません。とはいえ、彼のしなやかな動きを追っていると、それ自体が奏でる旋律そのもののように感じられたのです。彼自身がヴァイオリンと一体となって、全身でサウンドを作り出しているかのよう。あたかも楽器が安心して奏者に身を任せているかのように私の目には映りました。

 例えば、最も有名なパルティータ第2番の5曲目「シャコンヌ」では、絹のように柔らかく光沢があるようなサウンドで、聴く人を抱擁するような音楽を聴かせてくれました。こうしたタッチのバッハ、私はもちろん初体験でした。

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2010年4月2日のニュース