[ 2010年4月2日 06:00 ]

終演後、聴衆の温かい喝采に応える樫本 ※公演写真はサントリーホール提供

 さらに芸術監督のサイモン・ラトルについても聞いてみました。「まだ、そんなに何度も共演したわけではありませんが」と前置きした上で「信じられないほどクレバー(聡明)な方です。何よりもリハーサルの進め方の効率がとてもいいんです」と驚きを交えながら語ってくれました。確かにコンシェルジェが言うようにコンマスとしてラトルをはじめ、世界の音楽界を牽引する才能にあふれた名指揮者やソリストたちと共演を重ねていくことで樫本の音楽家としての姿勢やアプローチに何らかの変化が生じてくるのも当然のことのように思えました。

 今回、演奏を聴いた上に本人と直接話ができたことで受けた印象をニックネームで表現するならば(それも失礼な話なのですが…)、「ヴァイオリンくん」だな、と感じたのです。ヴァイオリンと一体となって自然体の演奏を繰り広げる姿がそう思わせたのですが、ご本人の印象も然りなのでした。自分のテクニックをひけらかしたり、名声のために弾いているのではなく、ヴァイオリンがあって曲があるから弾いているのだという、彼のアーティストとしての在りようが、たおやかで包容力のあるサウンドを生み出していたからに他なりません。

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2010年4月2日のニュース