アントニオ猪木さんが明かした「アリ戦の真実」
アントニオ猪木さんが世界的に有名になったのは、1976年に当時のボクシング世界ヘビー級王者ムハマド・アリさんと戦ったことだった。猪木さんが生前、スポニチ本紙に明かしたアリ戦の真実は…。
猪木さんは2010年、アリ戦を振り返り、「あの時のアリのダメージを考えれば、今の総合格闘技だったら、間違いなく、オレの判定勝ちだろう。しかし、そう思う半面、アリを尊敬する気持ちも強い。あれだけ強いキックを受けたら、普通のボクサーだったら倒れている。オレは負けなかったが、アリに勝てなかった」と総括した。
あの戦いで、猪木さんがアリさんに当てたキックは64発。それに対し、アリさんが放ったパンチの有効打は3発。アリさんは後に、血栓症のため、次のタイトルマッチで大苦戦するほどのダメージを負った。
試合が行われたのは76年6月26日の日本武道館。会場は1万4500人で超満員。試合は37カ国に衛星中継され、14億人が視聴した。
きっかけは、前年にアリさんが「誰かオレを倒す東洋人の格闘家はいないのか!?」と公言したこと。猪木さんはアリさんがクアラルンプールでのタイトルマッチのため東京を経由した際、関係者を通じて挑戦状をたたきつけた。
アリさんから要求されたファイト・マネーは約18億円。猪木さんは「金の心配より、戦いたい一心の方が強かった。『ボクシングこそ最強の格闘技』という言葉が聞き捨てならなかった。当時の日本は経済成長のさなかだったし、放送権料などで十分に支払えると思っていた。結果的に、大きな借金が残ったけれど」と苦笑した。
試合は3分15ラウンド。アリさん側から「ロープに触れた相手への攻撃は禁止」「立った状態でのキックは禁止」「頭突き、ひじ打ちは禁止」と厳しいルールを突きつけられていた。
猪木さんは「立った状態でのキックが禁止されているから、寝て蹴るしかない。観客の反応がどうだったか、全く覚えていない。観客のことを考える余裕などなかった。今でこそ、あのようなグラウンドの戦いは認知されているが、あの当時は、立って戦っているアリの方が優位に見えたかもしれない」と語った。
最大のチャンスが訪れたのが、第6ラウンド。アリさんが足を取りに来たところを、逆に足を持って倒し、馬乗りになった上で、ひじ打ちを1発、アリさんの額に入れた。
「もう1発、あそこで、ひじ打ちを入れれば、アリは立ち上がれなかったに違いない。ダウンした状態で受ける打撃のダメージは大きいからだ。結果的に、オレは反則負けになっただろうが、どんな形であれ、アリをぶちのめしたという事実は残る。しかし、オレはそうしなかった。今、考えてみても、なぜそうしなかったのかと不思議に思う。神様が裁いたというか…」
試合は15ラウンドまで行き着き、判定の結果は引き分け。すっきりしない結末に、場内は騒然とした。
「こんなはずじゃなかった。試合はあっという間に終わってしまった感じ、何かが一瞬にして消えてしまった感じだった」
翌日の新聞各紙にも酷評が並んだ。ところが、時が流れ、総合格闘技が普及した後、この試合に対する評価は大きく変わった。日本のプロレスラーがボクシングのヘビー級の現役王者と真剣勝負した事実は大きかった。しかも、相手は歴史に残るアリさんだ。今後も、これを超える、日本人がらみのビッグマッチは実現しないかもしれない。
猪木さんは「アリは試合から1年後、ビバリーヒルズで行った結婚式にオレを招待してくれた。試合直後こそ『あれはお遊びだった』と負け惜しみを言っていたけれど、その時は『あんな怖い試合はなかった』と本音を漏らした。アリに対して友情が芽生えた」としみじみ語った。
アリさんは、猪木さんが1995年に北朝鮮で行った試合、98年の猪木さんの引退試合にも駆けつけ、旧交を温めた。(総合コンテンツ部専門委員 牧 元一)
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