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【担当記者が悼む】取材時間気にする記者に「もっと飛び込んで来なければダメだ」忘れない猪木さんの説教

[ 2022年10月1日 14:10 ]

<アントニオ猪木氏・デビュー60周年記念記者会見>会見の最後に「1・2・3ダァー!!」をするアントニオ猪木氏
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 今も忘れられない“説教”がある。萎縮気味だった入社2年目の若手記者の目を真っすぐ見つめ「もっと飛び込んで来なければダメだ」と猪木さんは語り出した。20年以上、過ぎてもあの眼光の鋭さは忘れられない。

 入社1年目の冬だった。「猪木の引退試合まで連載だ」と上司から指令が下る。片っ端から本を読んだだけの半端な知識で、4月の引退試合までそのレスラー人生を掘り下げる。1回の取材は20分間。合計5、6回しか、機会はないのに約3カ月の長期連載だ。余計な“寄り道”をする余裕はなく、完走することばかり、考えた。心の奥底を見透かされたような言葉だった。

 “説教”は取材時間より、随分、長かった。隣でマネジャーさんが時計を気にしていたが、猪木さんは止めようとしない。真意は不明だったが、その後、引退試合で「道」という詩を耳にし、少しだけ分かった。その一節にある「危ぶめば道はなし」「踏み出せばその一足が道となる」はあの時の言葉と通じた。それは猪木さんの人生観そのもので、ほど遠くにいる若者をじれったく思ってくれたのだろう。そう思う。

 猪木さんにとって全くといってほど、割く必要のない時間だった。それをほんの数回会っただけの私にくれた。あの言葉は、なまけ者な自分へ戒めになった。引退するとは思えないほど、大きな存在だった。だから連載のタイトルは「不滅の闘魂」にした。あれだけ燃えさかっていた炎が消えるとは、想像さえできない。心からの感謝を込めて…合掌。(西部総局編集部部長・福浦 健太郎)

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2022年10月1日のニュース