阪神・岡田監督 「大山は心配ない」「佐藤輝は鍛えなあかん」「二塁の中野はいい」赤星氏と新春対談(2)

[ 2023年1月1日 05:15 ]

前回の 「アレ」から18年。長年のブランクを打ち破るべく岡田監督(左)が立ち上がる。右は赤星氏 (撮影・大森 寛明) 
Photo By スポニチ

 (1)から続く。

 赤星 アレを目指す上での打線について。現状ではズバリ4番は大山ですか?

 岡田 今やったらな。大山については心配はない。考え方もしっかりしている。安芸の秋季キャンプの感じから見たら、やっぱ大山が4番かな。1、2番を近本、中野でいこうと思っているからな。大山や佐藤輝は3番タイプじゃないわな。どっちかいったら、4、5番タイプやろ。大山も“自分は3番タイプとは違います”と言うとったからな。どういう意味か分からんけど(笑い)

 赤星 となると、3番は外国人選手ですね。

 岡田 そうやったらうまいこといくわな。ノイジーにしても、右に打てる選手を探しとったんよ。引っ張って、当たったら30発打つとか、そんな外国人はいらんと言っていた。右にも広角に打てる中距離バッターを探していた。それでノイジーが一番ええかと。そういう意味でな。

 赤星 ノイジーは左翼ですか?

 岡田 そやな。左翼のメインはノイジーでいこうと思っているけど。左投手がきたときに、右翼を右打者と左打者のどっちが獲っているかで変わるんやったら、ノイジーを3番に置いた方がええわな。だって、大山は3番できへんって自分で言うてんのやから(笑い)。どこにも載ってないやろ、3番タイプ、4番タイプ、5番タイプの違いなんて。“どこが違うねん!”って思うけどな(笑い)。でも、俺は3番は打ちやすかったな。

 赤星 そうなんですか?

 岡田 3番は打ちやすいで。後ろに打てる打者が2人いてるからな。5番は2死で回ってくるから極端なんよ。打ったら点が入る、打たんかったらアカン。3番は1死で回ってくるのが多いから、凡打しても、まだ後ろがいる。クリーンアップの中では3番が一番、楽やと思うよ。

 赤星 そしてポイントになる佐藤輝。どう見ていますか?

 岡田 秋季キャンプは日本代表の試合の関係で1週間くらいの参加やったからな。1年目も2年目も、佐藤輝の成績が後半に落ちるのは体力的な問題があると聞いていた。シーズンが終わって一番、動ける時に、一昨年も東京五輪やコロナの関係で秋に練習できんかったからな。佐藤輝のせいやないけど…鍛えなあかんのは確かや。

 赤星 打撃に関してはどうでしょう?

 岡田 本人にも秋に言ったけどな。グリップの高さと、スタンスの幅やな。もうちょっとスタンスが広くないとな。軽いよな。あの身長だから。“スパイクの刃で土をつかめ”と言っているんや。グッと踏ん張る体力やな。スタンスが狭くて、体が回るだけやったら楽やからな。オフの間に本人がどれだけやってくるか。2月にどんな姿を見せてくれるかやな。代わりはナンボでもおるしな。

 赤星 そういう危機感を持たせることも大事ですね。安泰じゃないぞ、と。

 岡田 大山と佐藤輝は一塁と三塁で固定と言っている。クリーンアップを打つような選手やから固定したい。でも、まだ決まったことじゃないぞ、とな。

 赤星 佐藤輝にはある意味、逆の期待を裏切ってほしい。

 岡田 そらそうよ。

 赤星 ドラフト1位の新人・森下にも注目しています。映像とかでは監督も確認していますね。

 岡田 映像は見たけど、実際を見てからやな。自主トレとか鳴尾浜でやると思うけど、そこからやな。

 赤星 どこまでのレベルかですよね。プロの投手にどれだけ対応できるか、という。

 岡田 そうよ。今の東都大学リーグで通算9本塁打(※1)ってのはどうなん?コロナで試合が少なかったんもあるんかな。ドラフト翌日に(中大に)指名のあいさつに行ったら、牧(DeNA)よりもええとは言っとった。牧よりもええんやったら、ええやん。森下は肩も強いと言ってたし、期待はあるわな。大卒の即戦力やし。2月キャンプのシートノックでは右翼が盛り上がるよ。6人くらいはいる。

 赤星 ポジションを狙う若手も多い。

 岡田 若い右打者なら、井上は飛ばすよ。大山より飛ばすで。板山もいいバッティングをしている。びっくりした。

 赤星 外国人ではノイジーともう1人、ミエセスも獲得。

 岡田 最初は1人だけと思っていたけど、話し相手もいた方がいいしな。いかついヤツやけど、若いし、伸びしろはある。特長のあるバッターやな。以前のバルディリス(※2)みたいに、日本で力をつければ面白い選手になる。

 赤星 監督からたくさんの名前が出てくるから、期待ができる。競争という意味では二遊間も誰が出てくるか楽しみです。

 岡田 二塁での中野の動きはいい。ゲッツーとか遊撃とは反対の動きになるけど、経験もあるし、慣れたら大丈夫と思っている。

 赤星 中野が守っていた遊撃は?

 岡田 平田ヘッドからいろいろ聞いて、思い切って小幡でいこうと最初は思っていたんよ。センターラインは大事やから、打たんでもええ、と。そこで出てきたのが木浪や。

 赤星 1年目からレギュラーでしたね。

 岡田 どこに行ったんやろと思っていた。そんなにあかんのかな?とね。でも安芸では吹っ切れて、躍動する姿を見せてくれた。肩も強いしな、いい選手だと再確認した。いい意味でポジション争いに加わってくれたな。

 赤星 投手陣はさほど心配はしていないと思うんですが。

 岡田 先発の頭数はいてる。最低で8人。9人先発がおったら、そら楽よ。6人で基本回して、4人が規定投球回数を投げる形で中心になって、調子のいいのを2人、入れていく。左の先発が伊藤将だけやから、誰かが出てきてほしいよな。

 赤星 岩貞もその意味で先発を。

 岡田 就任が決まった時に安藤投手コーチを通じて伝えた。先発となると、球種も必要になってくる。2桁勝った経験もあるからな。安芸では桐敷、及川を見たけど、まだもうちょっとや。春の競争が楽しみやな。

 赤星 ブルペンもポイントですね。

 岡田 前回はJFK(※3)がほぼ連日いけて、桟原、橋本、江草(通称SHE)とあと1人くらいで7人でブルペンを回せた。当時に比べて、連投も難しいから9人は必要になってくるよな。

 赤星 新外国人投手も獲得した。

 岡田 ビーズリーは右やけど、中継ぎで期待している。K・ケラーも昨年の後半から良くなっていった。でも外国人にそこまで頼らんでも大丈夫とは思っているよ。

 赤星 抑えは湯浅ですかね。

 岡田 まあ、WBCが今年はあるからな。1カ月以上、違うボールを使って、最後(決勝)まで行ったら、すぐ開幕になる。湯浅が選ばれたら開幕からは無理はさせない。最初は他につくろうかなと思っているけど。

 赤星 話を聞いていると、現場を長く離れていても、熱い情熱は変わらない。改めてそう思いました。

 岡田 基本的なこと、大事なことは前回も今回も一緒よ。難しいことはせんよ。アウトをしっかり取ることが第一。攻撃ではサインが“打て”やったら、ゲッツーを怖がることなく思い切って打つ。それだけや。(右打者が)右打ちを意識して、引っ張れずにファウルになる場面がこれまで多かった。無理やり、右におっつけて打ってもヒットにはならん。三ゴロ、遊ゴロでゲッツーでもええんや。

 赤星 2月のキャンプで確認したいポイントになりますね。

 岡田 実戦で選手がどういう考え方で打席に入っているのかは知りたいわな。いろいろ状況が変わる中、“普通に打て”という指示にどういう感覚で臨もうとするのかを見たい。進塁打と右打ちは別のもんよ。右に打っても、進められないこともある。じゃあ、どうすればいいのか。チームとしての点を取るための決まり事を、選手が分かるようにしていかんとあかんな。

 赤星 前回の監督時代には、そういうことをあまり聞いた記憶がないんですが?

 岡田 あの時は、03年にも優勝して選手はある程度完成されていたやろ。入ってきたのは鳥谷くらいか。監督としてやることはあまりなかった。ベンチ同士で勝負してただけやな。こっちが間違わない限り、そんなもん、負けるわけないわ。頭で考えてたのは、こっちが向こうのベンチに負けんようにすることだけやった。でも今回は年齢的には若いし、発展途上の伸びしろがあるチーム。難しいこと、新しいことを言ってやると、ものすごく意欲的に聞いてくれるんよ。そのやりがいはあるな。興味を持つから、必ず上達するで。力もあるんやし。

 赤星 それは新しい発見ですね。

 岡田 言ってやるのも必要かもわからんな。やっぱり俺も、選手時代は同じことばっかり言われてきた。同じことばっかりの反復練習って嫌やんか。気分が乗らないというか。そういうのもあるから、また違った新しいこと言ってやる方が、興味を持って練習するようになったよな。今の選手はそういう感覚なんやろな。おーん。

 赤星 監督自身が楽しそうです。

 岡田 しんどいけどな(笑い)

 赤星 アレへの手応えも感じます。

 岡田 そらおまえ、(巨人に逆転優勝を許した)08年の時も最後に営業が“優勝、優勝”ばかり言うて。9月ぐらいに“赤星がやっぱり優勝旅行はハワイがいいみたいです”と言ってきてなあ。すぐに言うたよ、“え?ドバイちゃうん?”て。社長が次はドバイに行くとか言うてたから。“でも赤星はハワイに行きたいらしいです”と営業が言いに来て、それからおかしなったわ(笑い)

 赤星 いや、あれは僕の意見じゃないですよ!諸先輩方のいろんな意見を聞いたら、ドバイよりハワイという声だったんで…。

 岡田 決まってもいないのに、そんなことばかり考えてたから、最後に勝てんかったんや。今回は最後までアレでいくで。

 赤星 分かりました。僕もアレでいきます。アレと「A.R.E.」が流行語大賞になる日が楽しみです。

 岡田 頼むで。選手たちの顔が早く見たなってきたな。

 (※1)東都大学野球の通算最多本塁打記録は青学大・井口忠仁(現資仁=93~96年)の24本。日大・村田修一(99~02年)が2位タイの20本で続く。ちなみにDeNA・牧秀悟(17~20年)は5本塁打。

 (※2)ベネズエラ出身のアーロム・バルディリスはメジャー経験がない無名選手として岡田阪神5年目の08年春季キャンプにテスト生として参加し、見いだされて育成契約を結んだ。同年5月に支配下契約。阪神では09年限りで戦力外通告を受けたが、10年から岡田監督が指揮を執るオリックスに移籍して才能が開花。14年からはDeNAでもプレーし、実働8シーズンで918試合、打率.268、93本塁打、387打点をマーク。

 (※3)ジェフ・ウィリアムス(J)、藤川球児(F)、久保田智之(K)の3人の継投による勝ちパターン。05年に岡田監督が確立。岡田監督1次政権最終年の08年まで不動の必勝リレーとして機能した。

 <編集後記>岡田監督、赤星氏ともに野球理論に精通しているだけでなく、頭の回転が非常に速い。流れるようにトークが展開され、あっという間に時間が過ぎていった。一応、話を回す役をさせてもらったものの、ほとんど出る幕がなかった。

 赤星氏は第1次政権の06年から3年間、選手会長。「そら、アレよ」と主語や説明を省く“岡田語”の真意をくみ取り、他の選手に伝える“通訳係”も担っていた。「監督が詳しく話すというより、パッと言われたことを僕らがどう理解するかだった。でも、当時は結構、理解している選手が多かったんで」と懐かしそうに振り返っていた。

 監督の話す高度な野球に、選手がどこまでついていけるか。若い現チームの大きなテーマとなりそうだ。(山添 晴治)

続きを表示

この記事のフォト

2023年1月1日のニュース