能見篤史氏　本紙評論家就任初仕事　オリ・宮城に15勝ノルマ「軸で投げないと」　師弟対談前編

本紙評論家に就任した能見氏（右）に15勝を誓った宮城（撮影・平嶋　理子）
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　2020年まで16年間は阪神でプレーし、昨季までの2年間はオリックスで投手兼任コーチとして活躍した能見篤史氏（43）が、1日付でスポニチ専属評論家に就任した。初仕事としてオリックス・宮城大弥投手（21）と新春対談。その前編では、後輩左腕をリーグ3連覇、そして2年連続日本一のキーマンの一人に指名するとともに、今季ノルマとして「15勝」を設定。達成した場合のご褒美は、会員制の高級会食！？（取材・構成＝湯澤　涼）

　宮城　明けまして、おめでとうございます。能見さんのスーツ姿、男前って感じですね。ちゃんと仕事やっていますか？もし手を抜いたら、呼んでくださいね。僕が能見さんを、叱りに行きます。

　能見氏（以下、能見）　まあまあ、なめているよね（笑い）。大丈夫、社会人7年やっているから。宮城は人懐っこいというか、いろんな選手をイジって、イジられて…。でも初対面の時は、1歩引いて僕を見ていたような…。

　宮城　5歩くらい引いて見ていました。クールで一人でコツコツやるようなイメージでしたから、近寄り過ぎたら「なんじゃオラ！」みたいな雰囲気がしたので怖かったです。

　能見　めっちゃ悪く言うやん（笑い）。普段あまり褒めないけど、野球のことで言えば宮城は、すごいの一言。高卒2年目から2年連続2桁勝利って、本当にすごい。

　宮城　普段褒められないので、うれしいです。いつも1行くらいで「まあ、いいんじゃない？」みたいな…。厳しい時の方が多いです。

　能見　体も大きくないのに“何で？”っていう、すごいボールを放るよね。ボールの強さを見ると、やっぱり勝てる（要素）というか…。あのボールの質は左投手の中で初めて見たかもしれない。いい投手をたくさん見てきたけど、ベース板（の上）の強さとか、他の投手とは違う独特の軌道を感じた。どうやったら、このボールの出力が出るのか僕自身、研究していた。投げ方自体は決してキレイではないので、改善点はめちゃくちゃある。まだまだ勝てる要素が、いっぱいある。

　宮城　毎日、球場でたくさん言葉をもらいました。何かと言われたら思いつかないけど、キャッチボールをしている時に「こうだったな」という感覚。そういう、何げない感じで言ってくれるアドバイスに、助けられました。　

　能見　あまり深く刺さらないようには、言っていたので。僕も阪神時代は下柳さんがたくさん教えてくれましたけど、そんなに（常に）残っていない。でもふとした時に「そういや…」って。結局やるのは本人。自分で考えて答えを出す。宮城自身がこれから目標にされる選手になっていく。あくまでもヒントになるものだけ。宮城からしてみたら「今年は勝てない」って言われたのは、残っていると思うけど。

　宮城　昨季開幕前に能見さんに「8勝止まりだな」って言われて、絶対に2桁、勝ってやろう！って。

　能見　投手は歯車が狂うと守りに入る傾向が強くて。僕自身も2カ月勝てないとか経験したし。宮城は性格的に“より慎重に”という傾向が、すごく見られたから。それが出るだろうな、という予想があって、8勝でラインを引いていたんですよ。

　宮城　勝って文句を言いたくて、「8勝以上なら、舞洲まで迎えに来てください」って約束したんです。実際に迎えに来てくれたんですが、京セラドームに送ってはくれなかった。迎えに来てくれた時、能見さんからお祝いの花を頂いて、いったん部屋に置きに戻った隙に、能見さんはいなくなっていて…。

　能見　迎えに行くとは言ったけど、送るとは言っていないから（笑い）

　宮城　2桁勝利したら、今度こそ舞洲から京セラに送迎と食事を…とお願いしたんですが、まだ食事にも行っていないですし、送ってもらってもいないです。
　
　能見　送らないです、そんなの。食事はちょっと考えているけどね。僕はいいけど、コロナ禍で宮城に迷惑がかかるとね。リーグ3連覇、今年も日本一を目指す上で、宮城と（山本）由伸と田嶋と、この3人はしっかり軸で投げてもらわないと、うまく回らない。宮城には15勝…そうですね、13勝は最低限。

　宮城　ノルマを達成できたら、食事のレベルを上げてもらいます。会員制の、隠し扉から入るような…。能見さんは、そういうお店を知っていると思うので。

　能見　知らないよ（笑い）

　宮城　遠征先もそうですが、どこの何が有名とか、どんなお店があるか分からないので、各球場で、その都度おごってもらいます。

　能見　僕が、あちこち行かなアカンの？

　◇能見　篤史（のうみ・あつし）1979年（昭54）5月28日生まれ、兵庫県出身の43歳。鳥取城北から大阪ガスに進み、04年ドラフト自由獲得枠で阪神入団。09年は先発に定着して13勝。12年に172奪三振で初タイトル。13年WBC日本代表。20年オフにオリックスへ移籍し投手コーチを兼任。22年限りで現役引退。通算成績は474試合104勝93敗4セーブ、防御率3.35。1メートル80、74キロ。左投げ左打ち。

　◇宮城　大弥（みやぎ・ひろや）2001年（平13）8月25日生まれ、沖縄県出身の21歳。興南では1年春からベンチ入り。1、2年夏に甲子園出場。19年ドラフト1位でオリックス入団。21年開幕5連勝など13勝で新人王。22年も11勝を挙げ、リーグ連覇に貢献した。1メートル71、78キロ。左投げ左打ち。