甲子園常連となった前橋育英の月曜日とは…花壇造りがきっかけの清掃活動

[ 2022年12月26日 07:30 ]

フィリピンへ贈るシューズを手にする前橋育英の境野、新井の両選手
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 お盆も、正月も関係なく、ひたすら猛烈な練習を耐え抜いた先に、勝利がある――。そんな時代も変わりつつある。昨年まで5大会連続で夏の甲子園に出場してきた群馬の強豪・前橋育英も、毎週月曜日はオフに充てていると聞いて、前橋へ足を運んだ。

 では、何をしているのか。選手各自は体のメンテナンスなどに充てながら、放課後に取り組んでいる活動もあるという。2013年夏、西武で活躍する高橋光成を擁し、初出場で初優勝を飾る前から、選手たちによって継続してきた地域活動だ。

 学校周辺をナインたちは自主的に清掃して回っている。地元では、すでに有名だ。荒井監督は振り返る。

 「地元から応援されるチームになりたい。そんな思いもあって、12、3年前に、自治会長さんに何かお手伝いできることはないだろうかと相談したんです。そのとき、グラウンドの裏側に“あじさい通り”を造ろうという話があって、花壇を造るお手伝いをさせてもらった。そこから、月曜日は練習がオフなので、近所のゴミ拾いとかをするようになったんです」

 まだ甲子園に出場する前の小さなきっかけが、甲子園常連校となった今も続く。スポーツ科学コースが多い野球部員の中で、特進コースのクラスメートでもある二人の2年生が、清掃の様子を案内してくれた。

 ゴミ拾い、掃き掃除、時には草むしりも行う。強肩遊撃手の境野朔人内野手は「入学してからずっと、月曜の放課後は20分ぐらい、清掃しています。普段、学校で思いっきり野球ができるのも近所の方々のおかげなので…」とその意義を明かす。俊足が武器の新井誉晃外野手は「清掃活動をするようになって、駅とか通学路でゴミがあると自然と拾うようになった」と日常生活の中でも意識に変化が出たという。

 年明けには、アップシューズなどをフィリピンに贈る予定だ。引退した3年生が不用になったもの、部室掃除によって出てきたものなどを捨てず、取り置いてきた。荒井監督は「知り合いにフィリピンで野球の普及活動をしている方がいて、以前にもその人を介して野球道具を使ってもらったことがある」と説明する。

 そんな話を知って、選手たちも何かを感じている。大きなビニール袋に入れて、シューズを保管する新井くんは「監督さんに、過去に集めて海外に集めて寄付したと聞いたので、自分たちもやりたいと思った」と言い、境野くんも「うちの野球部は部員も多いし、靴の消費量も多い。みんなに呼びかけていければ…」と今後にも意欲的だ。

 前橋育英のフリー打撃の練習中には音楽が流れている。その雰囲気は、まるでプロ野球のようにも感じた。高校野球のあり方もずいぶんと変わった。近年の同校の躍進ぶりを見れば、練習の雰囲気や地域活動、社会貢献といった精神を学ぶことも、今の子どもたちには魅力なのかもしれない。(記者コラム・横市 勇)

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2022年12月26日のニュース