【スポニチスカウト部(16)】東北福祉大・細川 勝利に導く「動く直球」

[ 2022年6月7日 06:10 ]

東北福祉大のエースとしてチームをけん引する細川(撮影・柳内 遼平)
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 今秋のドラフト候補となる選手にスポットを当てる「スポニチスカウト部」。アマチュア担当記者の独自目線による能力分析とともに、選手たちの素顔を紹介する。第16回はDeNA・細川成也外野手(23)の弟で、東北福祉大の最速150キロ右腕エース・細川拓哉投手(22)。19年から3年連続で投手がプロ入りしている名門からまた一人、夢の世界へ。

 投手王国・東北福祉大。20年はヤクルト2位で山野が、21年はオリックス1位で椋木がプロの世界へ旅立った。今年は細川の番になる。今春のリーグ戦で初先発すると、27回連続無失点の快投で、防御率は0・58と、圧倒的な成績を残した。

 「エースとして勝ちにつなげる投球をしようと思った。一球一球を大事にする中継ぎの意識で投げました」

 DeNAでプレーする長距離砲の兄に負けない1メートル76、88キロの屈強な体を備える右腕。最大の武器は140キロ台後半で、カットボールのように鋭く動く直球だ。左右どちらの打者も苦しめる「宝刀」に「動くのは武器。当たっても飛ばない球は魅力だと思っています」と胸を張った。

 明秀学園日立(茨城)では、エースとして3年春に同校を甲子園初出場に導いた。3回戦で大阪桐蔭に1―5で敗れるも、9回を投げ合った根尾(中日)からは左中間にソロを放つ意地を見せた。悔いなく投げきった394球。「あんなに野球を楽しいと思ったことはない。大きい舞台であるほど燃えてくる」と振り返る。

 信条にする「フォア・ザ・チーム」精神。明秀学園日立の金沢成奉監督から学んだ。簡単に145キロ以上をマークする東北福祉大の投手陣に、自信を失っていた1年秋。遠く離れた茨城の恩師に電話すると「スピードを出す投手が良い投手ではない。勝てる投手、ゼロで抑える投手が一番、良い投手なんだ」と進むべき方向性を示された。以来、マウンドでスコアボードのスピード表示を振り返ることはなくなった。

 勝利だけを目指した細川は、今春の仙台六大学リーグ制覇に貢献。全日本大学野球選手権出場を果たした。東北福祉大は7日に登場する予定。「福祉大の伝統、プライドを背負って投げたい」と誓った。(柳内 遼平)

 《“恩師”金沢監督、転向助言が転機》光星学院時代に坂本勇人(巨人)を育てるなど、選手育成に定評がある明秀学園日立の金沢監督。細川は中学時代は主に「1番・三塁」でプレーし、内野手として同校に入学してきたが、1年夏に「遊び感覚でいいから投げてみろ」とブルペン入りを指示。投手の感性を備えていると見抜いた指揮官は「お前はピッチャーでいける」と転向を勧めた。1年時に135キロを計測すると、3年時には144キロ、東北福祉大では150キロまで直球の最速は伸びた。眠っていた才能が花開いた細川は「金沢監督がいなかったら今の自分はないです」と感謝した。

 ☆球歴 明徳小1年時に北茨城リトルで野球を始める。中郷中時代ではいわきリトルシニアでプレー。明秀学園日立では1年秋からベンチ入り。東北福祉大では3年春からベンチ入り。

 ☆球種 直球、スライダー、カーブ、チェンジアップ、ツーシーム。

 ☆好きな選手 DeNA・山崎康晃。動画を参考にして鋭く落ちるツーシームを習得。

 ☆好物は仙台名物 宮城の東北福祉大進学後に分厚い牛タンを初体験。「これは牛タンなのか…と思ったけど、いまでは大好物」

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