いつもと変わらない 球春到来を告げる宣誓 未来への歩み見せた倉敷工・福島主将

[ 2022年3月20日 05:30 ]

第94回選抜高校野球大会第1日 ( 2022年3月19日    甲子園 )

選手宣誓する倉敷工・福島主将(撮影・大森 寛明)
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 【秋村誠人の聖地誠論】雨は上がった。まだ寒さが残る甲子園に力強い声が響く。コロナ下で簡素化された開会式。選手宣誓だけは変わらない。思いを、気持ちを込めた言葉を倉敷工・福島貫太主将が浜風に乗せた。

 「夢と志が人生をつくる」と語りだした宣誓は、コロナ下で野球ができることに「感謝」を3度重ね「ありがとう」。そして「夢や志を持ち続け、これからの未来に向かって一日、一分、一秒を大切に歩んでいきます」と続けた。大役を終えた福島主将の晴れがましい顔は、いつもの年の主将と同じだった。

 センバツの選手宣誓を聞くと、球春到来を感じる。記者が野球を始めた小学生のときからずっとそうだ。かつて春も夏も「宣誓、我々選手一同はスポーツマンシップにのっとり、正々堂々試合することを誓います」という短い定型文だった。でも、その年々で響きが違う。そして力強さに「野球の季節が来た」と感じていた。今でも「昔の方がいい」という声があると聞く。そんな意見も分かる。ただ、定型文の枠から外れた宣誓はいつも胸に残る。

 甲子園の選手宣誓が変わったのは、84年の夏から。記者の甲子園取材が始まるちょうど1年前だ。福井商・坪井久晃主将が「若人の夢を炎と燃やし、力強く、逞(たくま)しく、甲子園から大いなる未来に向かって」という言葉を盛り込んだ。甲子園が到達点ではない。夢の舞台で精いっぱいプレーした経験をこれからに生かしていく。そんな未来へ向けてのメッセージに聞こえた。

 あれから38年。福島主将も同じような言葉を響かせた。試合は延長11回、一挙7失点して敗戦。でも、その裏に返した1点は、福島主将の一塁へのヘッドスライディング(投手内野安打)からだった。その姿には、夢と志を持ち、未来へ向けた歩みが見えた。スタンドの観客に加え、アルプス席にはブラスバンドが帰ってきた甲子園。球春到来である。(専門委員)

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2022年3月20日のニュース