阪神ドラ4・前川が鮮烈G撃デビュー　掛布以来のオープン戦高卒新人マルチ達成　矢野監督「もっと見たい」

オープン戦   阪神2ー2巨人 （ 2022年3月13日    甲子園 ）

＜オープン戦　神・巨＞　9回2死、中前打を放ちベンチに向かって手を挙げる前川（撮影・大森　寛明）
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　22年最初の伝統の一戦で、衝撃のG撃デビュー！阪神のドラフト4位・前川右京外野手（18＝智弁学園）が13日の巨人戦に1軍昇格即「7番・左翼」でスタメン出場。球団高卒新人では1974年掛布雅之以来となるオープン戦マルチ2安打をマークし、聖地の虎党を沸かせた。当初は1日限定の予定だったが、矢野監督に「もっと見たい」と言わしめ、15日からの博多遠征切符もゲットした。　

　高校時代に4度出場した甲子園に、タテジマのユニホームに身を包んで帰ってきた。今季最多1万5994人の観衆からこの日一番の拍手が起こった瞬間は、前川のバットが奏でた快音の直後だ。
　「追い込まれてからずっと（変化球に）泳がされて、全然ダメだったのでなんとしても（ボールに）ついていくと思って、ちょっと我慢して打てました」

　1点劣勢の7回1死一塁で迎えた第3打席だった。2球で2ストライクと追い込まれながらも、必死に食らいついた。戸田の外角に逃げていく132キロのフォークにバットを合わせて右前へ。デビュー3打席目の初安打。フルスイングが信条の前川だが、この時ばかりは一塁塁上で笑顔がはじけた。その一打で好機を拡大すると、2死一、二塁から小幡の左中間二塁打で一塁から長駆生還。初得点も記録した。さらに9回2死無走者の第4打席も直江の136キロフォークを中前へ運び、マルチ2安打だ。

　球団の高卒新人野手のオープン戦マルチは74年掛布雅之以来で、オープン戦デビュー安打は平成以降では初。これは掛布雅之も、なしえなかった。運だけで2安打は打てない。

　だから、首脳陣も動いた。当初は1日限定の試合出場予定だったが、前川の4打席を見た矢野監督と井上ヘッドコーチは戦力になると判断。試合中のベンチからマネジャーに15日からのソフトバンク2連戦に同行させるための切符を手配させた。指揮官は「（バットを）小手先で振らないのが前川の魅力。もっと見たい。ファンの皆さんも、そう思っていると思う」と称えた。

　試合前練習後には智弁学園の7学年先輩、巨人・岡本和にあいさつし「思い切ってバットを振ってこいよ」と助言を受けた。それを実行し、4打席のうち3打席でファーストストライクを強振する積極性を示した。偉大な先輩と同じ土俵で戦うためにも、次の目標は「開幕1軍切符」だ。

　「やるからには（開幕1軍）を目指していますし、やっていかないといけない。グラウンドに立った以上は、自覚と覚悟を持ってやっていきたい」

　グラウンドに立てば、キャリアも年齢も関係ない。自らのバットで切り開いた好機。ライバルたちに打ち勝ってみせる。（石崎　祥平）

　○…前川（神）がオープン戦初出場でマルチ安打。平成以降（89年～）入団の阪神高卒新人野手のオープン戦出場は3月12日の中川（打席なし）に続く8人目で、デビュー戦の安打は前川が初めて。マルチ安打は74年に掛布が3月21日の太平洋戦2安打、24日の近鉄戦4安打の2度打って以来48年ぶりになるが、掛布のデビュー戦は代打で遊ゴロ。初安打は3試合目だった。なお高卒新人のオープン戦マルチ安打デビューは18年村上（ヤ）以来4年ぶり。主な選手では59年王貞治（巨）、10年筒香（横浜）らがいる。

　＜前川プロフィール＞
　★生まれ　2003年（平15）5月18日生まれ、三重県津市出身の18歳。
　★球歴　白塚小1年から白塚バッファローズでソフトボールを始め、投手で6年時に全国大会出場。一身田中では津ボーイズに在籍し、投手と外野手で3年時に全国大会出場。智弁学園では1年春から主力で、甲子園は同年夏、2年の交流試合、3年春夏と計4度出場。
　★3年夏の甲子園で2発　2回戦の横浜戦でバックスクリーン左へ放り込み、3回戦の日本航空戦では右翼へ一発。6試合で22打数10安打7打点、打率・455をマークし準優勝に貢献。
　★好きな打者　オリックス・吉田正。
　★家族　両親と兄。2歳上の兄・夏輝さんは三重県の津田学園出身で甲子園でも活躍した。
　★趣味　筋トレ。
　★好きな食べ物　母親が作るハンバーグ。
　★右京　刑事ドラマ「相棒」で俳優・水谷豊演じる杉下右京と同名。「名前は画数と響きで決めたようです。気に入っています。たまに相棒とか言われます」
　★背番号　現在は「58」。将来的には鉄人・金本の「6」継承熱望を公言。3年春、智弁学園を訪れた金本氏に直接指導を受け心酔。今季使用のバットも「金本モデル」に決定。