ヤクルト・高津監督 球団初の2年連続日本一へ「絶対大丈夫」から「絶対勝つ!!」

[ 2022年1月3日 05:30 ]

新春球界インタビュー(1)

今季の抱負をつづった色紙を手にガッツポーズを見せる高津監督(撮影・会津 智海)
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 昨季、チームを20年ぶりの日本一に導いたヤクルト・高津臣吾監督(53)が、本紙の新春インタビューに応じた。昨季は巧みな選手起用などのマネジメントを駆使し、「絶対大丈夫」の合言葉で選手を鼓舞して頂点に。球団初の2年連続日本一に向けて「絶対勝つ!!」としたためた指揮官は、離脱者ゼロを目標に掲げ、ナインにはハイレベルな競争を求めた。(聞き手・青森 正宣)

 ――あけましておめでとうございます。球団初の2年連続日本一が期待されるシーズンに向け、今の時点で思うことは?
 「また一から、新しいスタートが始まると思っています。言葉はおかしいけれど、もちろん勝ちたいし、優勝は目指すけれど“連覇、連覇”とはあんまり考えていない」

 ――監督2年目の昨季、自身で成長したと思う部分は。
 「人の話を聞くようになった。何でもかんでも自分でやろうとし過ぎたのが1年目。任せようと思ったのが2年目。最後はもちろん僕が判断するけれど、ローテーションや打順、作戦、いろんなことをコーチと話し合いながらつくっていったのが、21年の野球」

 ――昨季はケガをさせないマネジメントが成功した。今季は。
 「ケガをさせないことは最大の目標であり、一歩目の目標。離脱者をゼロに限りなく近づけることは僕の大きな仕事の一つ。それが成功しないと、勝つこと、連覇、全てがうまくいかないと思う」

 ――そのためにオフの過ごし方のアドバイスを選手にしたのか。
 「“休む人は休んでもらっていい。短いオフを有効に使ってもらって、区切り区切りに合わせてくれたらいい”とシーズン後に伝えた。強制は絶対しない。何も言わなくても練習する人は練習する。長く公式戦をやったわけだから、絶対疲れているし、ゆっくりスタートでいい。2月1日に開幕の状態に持っていく必要は全くない」

 ――投手陣に求めることは。
 「投手だけじゃないけれど、高いレベルの競争をしないといけない。1軍メンバーや先発、リリーフの枠、いろんな競争があっていい。みんながガツガツして狙っていかないといけない。規定投球回や勝利数、数字はあとから設定するもの」

 ――打順は昨季は後半は、ほぼ不動。今季の構想は。
 「ある程度固定して戦えたのは勝ちにつながった大きな要素。状態を見ながらになるけれど、できるだけ、形は強固なものにしていきたい。21年の形が基にはなるけれど、誰がどこを打ってもいい。22年のオーダーを最初から最後まで、できるだけ崩さずにやっていけたらなと」

 ――遊撃も固定できるのが理想か。
 「一番はそう。昨年は元山と西浦を使ったけれど、お互いに持っていない部分もいろいろ持っている。(当面は)チーム状況、相手投手、いろんな状況を考えて併用していくのかなと」

 ――村上は2年連続で全試合4番を務め、リーグMVPにも輝いた。真の4番として求めることは。
 「こんなもんで“真の4番”と言われては困る。相手投手が、打席やネクストバッターズサークルに打者・村上を迎えたときに、どれだけプレッシャーをかけられるか。ムネ(村上)はまだまだ」

 ――最後に、今季の意気込みを。
 「自分らしく、ヤクルトらしく、いかにできるか。勝つ喜びと負ける悔しさをこの2年で両方味わったので、そこの感情をコントロールしながら、勝つ難しさをまた勉強していけたらなと思います」

 《高津流マネジメント術》高津監督は昨季、故障予防のため、キャンプ日程を前年日本一のソフトバンクと同じ3勤1休として休養も重視した。中継ぎ陣の連投はシーズン終盤まで最長3日連続に制限。勝負どころと判断した10月の3位・巨人、2位・阪神との神宮6連戦でリミッターを解除し、「勝利の方程式」の清水とマクガフが4連投した。高卒2年目だった奥川は体づくりを並行させるため、登板間隔は原則的に中10日。一方でカード初戦を任せるなど経験も積ませ、チームトップタイの9勝を挙げるまでに成長させた。

 《山田、村上、オスナの主軸はほぼ固定》ヤクルトで昨季、打順で100試合以上固定されていたのは山田、村上、オスナの3、4、5番。守備位置では遊撃手以外の7ポジションが、100試合以上固定されていた。西浦、元山らによる正遊撃手争いに加え、他のポジションではレギュラーを脅かす存在がどれだけ出てくるかが、野手陣の大きなテーマとなる。

 《1番・塩見に盗塁王を期待》高津監督は昨季ブレークした塩見について、今季も「1番センターをやってもらいたい」と語った。リーグ3位の21盗塁と足でも貢献したリードオフマンの初の盗塁王獲得に向け「それだけの脚力はある」と期待。一方で「1番として引っ張ってくれる存在にはまだまだ不十分」と成長を促した。塩見本人も「とにかく塁に出る。盗塁してチャンスメーク。そういう選手になっていきたい」と自覚を口にしていた。

 【取材後記】高津監督は、場の空気を乱した侵入者にも動じなかった。神宮のクラブハウスの一室で行われたインタビュー中、換気のため開けられたドアからハエが室内へ。冷静に手で振り払いつつ、今季のプランを語り続けた。

 20年ぶりの日本一に輝き、オフはメディアに引っ張りだこ。当日の取材時間は撮影込みで15分で、記者も普段以上に緊張して臨んでいた。多忙の中、嫌な顔ひとつせず時間いっぱいに応じてくれた心遣いに感謝した。

 昨年12月11日の「野村克也さんをしのぶ会」で「若い頃に野村監督に“とにかくメディアに出なさい。しっかりしゃべれる人間になりなさい。自分、チームをアピールするのも大事”と教えていただいた」と話していた指揮官。恩師の言葉を率先して体現していた。(ヤクルト担当・ 青森 正宣)

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