まるで映画…細田学園の最速115キロ右腕が強豪校を封じた「K.U.F.U」

[ 2020年10月23日 09:00 ]

細田学園の飯吉陽来。準決勝ではベンチでエース・松本の完投を見守った(撮影・柳内 遼平)
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 ラジオ番組で映画評論をよく聴く。一つのドラマを見て伝える、という点で新米記者の私にとって大変参考になる。映画評論家の第一人者といえば「サヨナラ、サヨナラ…」の台詞で有名な故・淀川長治氏だが、日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER」のMC・宇多丸氏もラジオ番組で評論をするなど映画評論家としての顔を持つ。

 宇多丸氏の評するポイントの1つに「K.U.F.U」という観点がある。低予算の映画でどう「工夫」するか、弱者が強者にどう「工夫」して勝つかといったもので、同名の楽曲もある。ある試合で、野球も「工夫」がものを言うスポーツだと改めて感じた。

 秋季高校野球埼玉県大会の準々決勝が9月27日に行われ、創部7年目で実績の乏しい細田学園が春夏合わせて12回の甲子園出場を誇る名門・花咲徳栄を3―2で破る大番狂わせがあった。

 先発投手に指名されたのは背番号18で控え外野手の飯吉陽来(いいよし・はるく=2年)。大金星の立役者は公式戦の登板経験がなく、直球の最速が115キロ。右腕はある「工夫」で強打線に対して8回0/3を4安打2失点の好投を見せた。

 直球が速いほど変化球も生きる。だから皆、速球を求める。持たざる者の彼は工夫した。直球をあえて遅く投げ、変化球と球速差のない直球で花咲徳栄打線を翻弄(ほんろう)。両親から「陽が差し込む一生であるように」と願いが込められた名のごとく、である。「北風」のように強く押すのではなく、心地良い「太陽」のような緩いボールで、まんまとコートを脱がせたのだった。
 陽の当たらない控えだった飯吉にとって激動の1日だった。当日午前6時にグループLINEで初先発を知り、マウンドへの恐怖から、思わぬ好投へ。人生初のインタビューを受け、翌日からヒーローとしての学校生活が始まった。まさに映画の題材になりそうな話だ。

 「エイリアン」「ターミネーター」「ゴッドファーザー」…。名作には続編にも傑作が多い。来年のセンバツが懸かる関東大会(あす24日開幕=千葉)で、細田学園の下克上ストーリーの「パート2」が封切られる。(記者コラム・柳内 遼平)

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