「特別な甲子園」が始まる――磐城、特例措置参加の木村前監督と夢舞台「魂込めて最後のノックを」

[ 2020年8月10日 05:30 ]

交流試合でのノッカー参加が認められ、ナインに笑顔で語りかける木村前監督
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 新型コロナウイルスの影響で中止となった今春センバツに出場予定だった32チームによる「2020年甲子園高校野球交流試合」が、10日から17日(13、14日は予備日)まで甲子園で開催される。21世紀枠で選出されていた磐城(福島)は9日、4月から福島商に異動していた木村保前監督(50)のノッカーでの同行が決まったと発表。各チーム1試合限定ながら全国の約13万8000人の球児たちの思いが込められた特別な舞台。聖地に熱い夏が戻ってくる。 

 まだ冬の気配が残っていた3月30日の涙のノックから132日。真夏に野球の神様から最高のプレゼントが届いた。磐城ナインの「甲子園高校野球交流試合」は15日の国士舘戦。試合前にノックに参加することが正式に決まった木村前監督は激励のため同校を訪れ、素直な心境を語った。

 「正直うれしいです。試合前に最高の準備ができるよう、魂を込めて、3年生にとって高校生活最後のノックをさせてもらいたい」

 母校の指揮官となって6年目。1月に21世紀枠で46年ぶりの甲子園出場が決まった。今春限りで福島商への異動が決まっていただけに喜びもひとしおだった。だが、大会はコロナ禍で中止。離任式ではナインにラストノックを行った。指揮官、選手だけでなく、見守る関係者も全員が涙。双方がけじめをつけ、新たな道へと進んだ。

 夢舞台は幻と消えたが、6月10日に出場予定だった32校による交流試合の開催が決定。木村前監督のように指導者が交代している学校もあることからノッカーとして参加可能という特例措置が認められることになり、磐城が前監督に同行を依頼した。渡辺純現監督(38)も「木村先生がいれば百人力どころか一万人力。選手に力を与えてほしいです」と目を輝かせる。

 センバツ用に新調したユニホームやバッグ、ノックバットは自宅の寝室に大切に保管している。本番で使用するバットは母校野球部の同期から贈られた特注品で、チームテーマの「Play Hard」の文字も刻まれている。木村前監督は「やっと出番が来た。上から下まで磐城一色で挑みます」と再びコバルトブルーの戦闘服に身を包む日を心待ちにする。

 7日まで行われた福島県の代替大会は14連覇を達成した聖光学院に準々決勝で敗れたが、磐城ナインには続きがある。岩間涼星主将(3年)は「甲子園という舞台に保先生と立てることが本当にうれしいけど、優勝しても甲子園に行けないチームの思いも背負って戦う使命がある」と全員の思いを代弁した。

 未知のウイルスの猛威で多くの球児が夢を奪われた。2020年、夏。選ばれし者たちによる特別な舞台。木村前監督が魂のノックでナインを送り出す。(秋元 萌佳)

 ◆木村 保(きむら・たもつ)1970年(昭45)8月8日生まれ、福島県いわき市出身の50歳。磐城から東京電機大に進学し、教職員免許を取得。いわき光洋(定時制)や安達東、内郷(現・いわき総合)、須賀川で指導に当たり、11年は須賀川で夏の福島大会で準優勝。14年から磐城で1年間顧問を務めた後に監督に就任。20年4月に福島商に異動し、現在は福島県高野連副理事長。

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