【スポニチ潜入(15)特別編】独立リーグの兵庫・落合― 「井川イズム」胸に最短NPB狙う

[ 2020年6月22日 10:00 ]

独立リーグ兵庫・落合秀市投手
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 スポーツニッポン新聞社がお届けする記事と動画を連動した企画「スポニチ潜入」。主に関西圏のアマチュア野球選手を紹介する本日公開の第15回は、特別編として「プロ」を取り上げます。最速149キロを誇る本格派右腕で、関西独立リーグの兵庫ブルーサンダーズに今季から加入した落合秀市投手です。

 まだ、記憶に新しいことだろう。昨年10月17日のドラフト会議。最後まで名前が読み上げられることがなかった「紀州の剛腕」は野球を辞める意思を表明し、世間の耳目を集めた。あの日から約8カ月(6月22日時点)。紆余(うよ)曲折をへて和歌山東から巣立った落合は今、関西独立リーグの兵庫で汗を流している。目指すは、最短1年でのNPB入りだ。

 1メートル85、90キロ。その堂々たる体格をフル活用したダイナミックなフォームから投げ込むボールは、最速149キロを誇る。スライダー、スプリット、カーブ、カットボールと変化球も多彩。高校時代にはスイングスピードも最速143キロを計測し、持って生まれた身体能力自体が高い。

 昨秋ドラフト前にはNPB全12球団から調査書が届いたように、素材に関しては「高校生BIG4」として注目を集めた佐々木朗希(大船渡→ロッテ)、奥川恭伸(星稜→ヤクルト)、西純矢(創志学園→阪神)、及川雅貴(横浜→阪神)にも劣らない評価があった。その落合に今年の抱負を聞くと「プロに行くこと」と即答した上で、言葉を続けた。

 「人として大人になれるように、野球とともに頑張っていきたいです」

 野球の上達と同じくらい、人間力強化にも意識を向ける。今年からは兵庫県三田市内で下宿生活を始めた。初めて親元を離れ「洗濯やご飯を作るのは大変です。親のありがたみを感じます」と苦笑い。無給の関西独立リーグでプレーを続けるには生活費を稼ぐ必要があるため、同市内でアルバイトも始めた。「やっぱり、お金を稼ぐのは大変ですね」。すべてを人生経験の一環ととらえ、前向きに取り組んでいる。

 新天地では「猛虎のレジェンド」と身近に接し、感銘も受けた。03年に20勝をマークして沢村賞を獲得するなど阪神のエースとして2度のリーグ優勝に貢献し、ヤンキース、オリックスでもプレーした井川慶投手だ。同投手は今も兵庫を練習拠点としており、落合もキャッチボールの相手を務める機会に恵まれた。そのボールを体感して「回転がきれいで伸びていたので、すごいと思いました」と目を丸くし、ブルペン投球を見学して「自分もあれくらいゴツくならないといけないのかなと思ったりしたので、筋トレとか、頑張っていきたいと思います」と決意も新たにした。

 その「背中」を見ただけではない。「井川さんには、いろいろなお話も聞かせていただきました。心に残ったのは“周りじゃなく自分。周りのことは気にせず自分のことに集中してやればいい”という言葉です」。沢村賞左腕から授かった「金言」を胸に、我が道を歩む覚悟も固めた。

 6月19日には06ブルズ戦でリーグ戦デビューを果たした。7回から中継ぎとして登板すると、1安打2与四死球でピンチを招いたが2奪三振と要所を締め1回無失点。直球の最速も145キロを計測し、視察した西武のスカウトに健在ぶりをアピールした。最短1年でのNPB入りを目指し、落合は独立リーグの舞台で懸命に腕を振る。(大阪報道部・惟任 貴信)
 
 ◆落合 秀市(おちあい・しゅういち)2001年(平13)7月10日生まれ、和歌山県出身。紀之川中では「和歌山ビクトリーズ」に所属し投手。和歌山東では2年時から頭角を現し3年夏は和歌山大会3回戦で市和歌山に敗戦し甲子園出場なし。今年から関西独立リーグ兵庫に加入。50メートル走6秒6、遠投120メートル。1メートル85、90キロ。右投げ右打ち。
 
 ※ 本記事の動画は弊社YouTube公式チャンネル「スポニチチャンネル」(https://www.youtube.com/channel/UCCDmd01WsuFBF8n3yMjHQ1A)において6月22日正午頃、公開予定です。

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