大谷160キロの道 花巻東1年時から取り組んだ壮大なプロジェクト 雄星先輩を「超えたい」
第94回全国高校野球選手権岩手大会準決勝 花巻東9―1一関学院 ( 2012年7月19日 岩手県営 )
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【忘れられない1ページ~取材ノートから~】12年夏。花巻東(岩手)の3年生・大谷翔平投手(当時18=現エンゼルス)は、岩手大会準決勝の一関学院戦で、高校生で初めて160キロを計測した。故障に苦しみながらたどり着いた大台。その裏には1年時から佐々木洋監督(44)と取り組んできた壮大なプロジェクトがあった。エースと指揮官が書き上げた「目標設定シート」の中身とは――。(川島 毅洋)
中学3年生だった大谷は、甲子園で躍動する菊池雄星(現マリナーズ)に憧れ、花巻東への進学を決めた。当時、菊池は高3。155キロのストレートを投げるなど注目を集め、ドラフトでは6球団競合の末、西武に入団した。年が明け、卒業を控えたある日、菊池はこんな言葉を漏らした。「僕なんかより全然凄い選手が入ってくるみたいですよ」。噂がとどろく後輩を楽しみにしていた。
菊池と入れ替わりで入学した大谷は「自分も雄星さんのようになりたい」と目標を口にした。ところが、佐々木洋監督は「ダメ」と突っぱね、こう諭した。「“雄星みたいになりたい”では雄星の少し下で終わる。“超えたい”と思ってやらないと目標には届かないよ」。超えることが明確な目標になった。
花巻東野球部では「マンダラチャート」と呼ばれる目標達成のためのシートを活用している。81マスの真ん中に一番大きなテーマを書き込み、それを達成するために必要なことを8つのテーマに分け、それぞれをさらに8つに分けていくもの。大谷は1年時のシートの真ん中に「ドラ1 8球団」と記した。そして、その右横のマスには「スピード 160km/h」と高校生では未知数の数字を書き込んだ。
提出されたシートを見た佐々木洋監督は、自身でも大谷指導用のマンダラチャートを作成していた。真ん中には「ドラ1 8球団 MAX160」。選手と指揮官が、本気で160キロに狙いを定めた。大谷が2年時の11年夏に甲子園出場。初戦の帝京戦で敗れたが、救援登板し150キロをマーク。プランは順調に進んでいた。
一方で、大谷は体の成長による骨端線損傷の故障を抱えていた。佐々木監督は2年秋に大谷の投手起用はせず、打者に専念させた。監督がチャートにも記していた「ケガ」の項目では、ストレッチの徹底や補食を取る時間まで具体的に書いた。そして、選手たちにはこんな話もした。「俺は(大谷)翔平を特別扱いするよ。ケガを早く治すためには、寝ないといけない。休息も練習なんだから」と、練習を早めに切り上げさせ、睡眠を優先させた。
12年7月19日。高校最後の夏を迎えた大谷は、準決勝の一関学院戦で、歴史をつくる。6回2死二、三塁。鈴木匡に投じた83球目。外角低めで見逃し三振を奪った球に、球場表示が「160」と光った。大谷は「監督さんと目指してきた数字。うれしい」とコメントした。ベンチでの佐々木監督は「やっと、出たか」という思いだった。監督のチャートには「メンタル強化」の項目もあった。そのために紅白戦ではあえて先頭打者を出塁させ、ピンチを乗り切る投球も課していた。大谷が160キロをマークしたのは走者を2人背負った場面。心身ともに、成長した証だった。
「雄星を超える」という目標設定から、高校生初の大台に。佐々木監督は当時、こんなことも言っていた。
「これからは160キロを投げる投手はどんどん出てきますよ。境界線がなくなったので。現実になったことでこれからの選手も目標にするでしょうね」
7年の月日が流れ、昨年。菊池も大谷も海を渡った後、大船渡の佐々木朗希(現ロッテ)が163キロを計測した。大谷が高校時代、ウエートルームの壁に記していた数字が、同じ岩手の新怪物によって達成された。
≪直球49球中150キロ超え40球≫試合は7回コールド勝ち。大谷は7回を3安打1失点で13三振を奪った。全99球のうち直球は49球。150キロ超は実に40球もあった。日南学園時代、01年夏の甲子園で158キロをマークした寺原隼人(当時オリックス、現琉球ブルーオーシャンズ投手コーチ)も大台到達を知り驚嘆。「高校生で160キロ出すなんて、凄すぎでしょ?テレビで見たことがありますが、きれいな投球フォームで潜在能力が高い印象を受けました」。自身の数字を超えられて悔しがるよりも、新たなスターの誕生を予感しているようだった。
≪98年松坂きっかけに球児の球速浸透≫高校生の球速がファンに浸透するきっかけは、98年に横浜高で春夏連覇を果たした松坂大輔(現西武)の存在が大きかったとされる。甲子園にスピードガンが設置されたのは92年だが「高校野球にふさわしくない」との理由で球場内のスピード表示はされていなかった。97年に朝日放送が表示を始めると、NHKは松坂の衝撃を受けて00年から表示。プロと同様に、投手のスピード表示がスタンダードになった。
甲子園での球場表示が始まったのは04年センバツから。電光掲示板で初めて150キロを超えたのは、05年夏、大阪桐蔭の左腕・辻内崇伸だった。初戦の春日部共栄戦の1番打者に対して152キロを計測し、球場全体がどよめいた。
現在、高校生最速は昨年4月に大船渡(岩手)の佐々木朗がマークした163キロ。あるベテランスカウトは「90年代前半くらいまではドラフト候補の基準は140キロを投げる投手だった。今は高校生でも普通に150キロが出る時代になった。それだけ速くなっている」と話す。トレーニングや体づくりの進化によって、年々レベルが高まっている。
≪プロ最速は165キロ≫大谷のプロ入り後の最速は、日本ハム時代の16年10月16日、ソフトバンクとのCSファイナルS第5戦(札幌ドーム)で計測した165キロ。「3番・DH」でスタメン出場したが3点リードの9回に救援登板し、165キロを3度計測して公式戦初セーブを挙げた。メジャー移籍後の最速は18年5月30日の敵地タイガース戦でマークした101.1マイル(約162.7キロ)。5回1失点で勝敗は付かなかった。
◆川島 毅洋(かわしま・たけひろ)神奈川県出身の41歳。02年入社。編集センター(整理部)を経て巨人、西武、アマチュア野球などを担当。現在は西部総局でソフトバンク担当。
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