林威助氏 日本に、古巣阪神にエール「お互いに今は耐えるしかない」

[ 2020年4月13日 05:30 ]

林威助氏
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 新型コロナウイルスの影響で世界中のスポーツイベントが延期や中止を余儀なくされている中、台湾プロ野球(CPBL)は12日に無観客での公式戦開幕にこぎつけた。中信兄弟で2軍監督を務める阪神OBの林威助(リン・ウェイツゥ)氏(41)は台湾の現状を明かし、古巣の阪神にも熱いメッセージを送った。

 林威助氏は海の向こうから古巣を案じた。「日本は大丈夫ですか?」。それが第一声だった。高校、大学、そして阪神の選手として長い時間を過ごした第2の故郷をいまも気にかけていた。

 「(日本の情報は)知っています。ネットで見たりしている。毎日、感染者が増加していることも知っている。本当に怖い…」

 感染者が日ごとに増える日本とは対照的に台湾は感染拡大に一定の歯止めがかかり、プロ野球も待望の開幕を迎えた。2軍は先月17日に一足早く開幕し、中信兄弟は8勝3敗2分けの首位。若手選手を率いて采配や指導に努める日々だ。

 「台湾はプロ野球選手の感染者は出ていません。ですが、まったく油断はできません。僕は日本にいたので経験していませんが、台湾は03年にSARSを経験しています。今、僕自身も親と話すときでもマスクをしています。今でも選手たちには(感染拡大防止への)指導をしています」

 2軍監督就任3年目の今季も選手とともに寮で集団生活を送る。基本的に外出は自粛。練習ではかみたばこを禁止し、当然ながらグラウンドにつばを吐くことも厳禁だ。寮生には手洗いやマスクの着用、消毒・検温の徹底だけでなく、外出も申告制にした。近隣に買い物で出るだけでも帰寮後は再度の検温を義務付けているという。

 「休みの前日が一番危険なので、選手たちには人が多いところには行かないで…と言っています。せっかく今まで我慢したのだから。プロとして野球ができることをかみしめて、責任を持っていこう…と。外出も外食もしたい気持ちは分かる。でも、今は我慢してくれ…と」

 選手の気持ちを理解しつつ、2軍監督の立場としての責務を優先。グラウンド内外の徹底した指導の裏側には「野球ができる喜び」があった。

 「コロナは日本だけじゃなく世界中のこと。とにかく自分を守り、人にうつさないこと。感染者が増えると野球ができないんです。そのためにはお互いに今は耐えるしかない」

 就任から2年連続で2軍を「年間優勝」へ導き、昨季は開幕時に2軍だった3選手が1軍定着を経て台湾代表入りするなど育成手腕を発揮。「今年も1人でも多く1軍に送り込みたい」と意気込む。“猛虎の血”が流れているのだろう。阪神への愛着はいまも強く、「調整も難しいと思うけど、選手は頑張ってほしい。優勝してほしい」と開幕を願ってエールを送った。(山本 浩之)

 ◆林威助(リン・ウェイツゥ)1979年1月22日生まれ、台湾・台中市出身の41歳。96年野球留学で来日し、柳川、近大を経て02年のドラフト7巡目で阪神入団。06年から背番号31を付け、07年に右翼と一塁のレギュラーで115試合に出場。13年まで通算454試合、打率・264、31本塁打、125打点。阪神退団後は台湾に戻り中信兄弟でプレー、17年引退。18年から同球団2軍監督。左投げ、左打ち。

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