アスリート生命懸けての手術 「不要不急」で片付けるべきものなのか

[ 2020年4月2日 09:00 ]

16年、レンジャース時代のダルビッシュ
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 肘のじん帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)の権威として知られるジェームズ・アンドルーズ医師(77)が3月31日、当面の間、同手術を行わないと発表した。アンドルーズ医師は過去にレンジャーズ時代のダルビッシュ(現カブス)、レッドソックス時代の田沢(前レッズ)、カブス時代の藤川(現阪神)らを執刀した名医だ。

 勤務する医療施設が米フロリダ州にあり、同州では3月上旬、新型コロナウイルス感染拡大の折、不要不急の手術を禁止する行政命令を出していた。背景には、この手術が不要不急だという議論があったという。この施設は「行政命令に従い、トミー・ジョン手術を含む緊急ではない手術を停止する」と声明。確かに一般的な「人命」という意味では不要不急なのは間違いなく、院内感染の怖れもある。ただ、復帰まで1年以上を要する手術だけに、アスリート生命、投手生命という文脈においては、果たして「不要不急」なのだろうか、という疑問はある。

 同じくトミー・ジョン手術の権威で、18年秋にエンゼルス・大谷の執刀医を務めたニール・エラトロッシュ医師は、カリフォルニア州ロサンゼルスで3月30日にレッドソックスのエース左腕セールの手術を担当した。エラトロッシュ氏はサンフランシスコ・クロニクル紙の取材に「(この時期手術を行うことに)批判を受けていることは知っているが、彼らの生活にとっては重要なことだ」と強調。「1シーズンでなく2シーズンを棒に振るかもしれない選手生活の危機で、私は“不要不急だ”とは言えない」と訴えた。

 大谷は18年のシーズン終了翌日に手術を受けた。当時は20年開幕からの投手復帰を目指す中での逆算だった。セールは21年6月の復帰を目指す。いずれも投手として、少しでも早く、再びマウンドに立つことを願っての決断である。

 地域ごとの医療環境の違いなどもあるだろう。どちらが正解とは言えないし、どちらの考えも否定をするつもりはない。ただ、投手たちがアスリート生命を懸けて手術を受けると下した決断自体を「不要不急」と片付けるべきではない。(記者コラム・大林 幹雄)

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