【内田雅也の追球】季節“逆戻り”への対応――開幕延期で再調整に入った阪神・藤川

[ 2020年3月14日 08:00 ]

6回1死二、三塁、T岡田に3点本塁打を打たれる藤川
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 主演・妻夫木聡、高畑充希らが出ていた映画『バンクーバーの朝日』(2014年。監督・石井裕也)は実在した戦前のカナダ日系移民がつくった野球チームを描いている。現地紙の報道やパンフレットによると、栃木県足利市内につくられたオープンセットは当時の街並みを忠実に再現していたそうだ。

 選手たちが集まる日本人街のレストランの壁に英語で「季節は四つある」と刻まれた額が掛かっていた。「冬、夏、秋、そして、野球だ」

 春を野球と置き換え、まるで「球春」を意味するようでしゃれている。北米では昔からよく言われているそうだ。

 プロ野球公式戦はシーズンと呼ばれる。四季を感じながら戦うスポーツなのだ。選手たちはその時々で季節を感じながら、プレーしている。

 阪神は13日から京セラドームでオリックスとの3連戦に入った。この屋根付き球場が開場した1997年以降、ほとんど毎年、開幕前最後のオープン戦をここでオリックスと戦っている。

 阪神の選手には「京セラで最終調整」という、慣れた感覚があるはずだ。それは、体に染みついた季節感と言えるだろう。

 今年は東京五輪開催でシーズン中断があるため、例年より開幕が早く、京セラでのオリックス戦も早まった。ところが、折からの新型コロナウイルス感染拡大で開幕は延期されることになった。今月20日だった開幕予定が、最短で4月10日と3週間以上延びる。

 選手たちは大幅な調整変更を余儀なくされる。生半可なことではない。

 だからだろう。この日登板した藤川球児はいつもと違っていた。本塁打を含む5安打を浴びて5失点したのは再調整に入ったことを意味していると見て取った。

 つまり、3週間以上、季節を戻そうとしているのだ。何も聞いたわけではないが、変化球を多投し、スライダーを試すような投球内容がそれを証明している。

 ユーミン(松任谷由実)の曲に『まぶしい草野球』がある。不二家ソフトエクレアのCMソングだった。早春、手作りランチを手に彼氏の草野球を応援にいく心情を歌う。なかに、こんな歌詞がある。

 <まだ季節浅く 逆戻りの天気もあるわ>
 冬から春へ、季節が変わろうとする時、春疾風の南風が吹いては温かく、後に寒さが戻り、雨が降っては温かくなる。三寒四温で春に向かう。

 この日、ドームの外はぽかぽか陽気だったが、また寒い風が吹き、冷たい雨が降る日もあるだろう。選手たちの調整は<逆戻りの天気>がちょうどいいのかもしれない。長年の季節感で、藤川は分かっているのだろう。      =敬称略=
     (編集委員)

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