史上2度目 投手出身の指揮官が同一リーグに3人 その手腕は?

[ 2020年2月10日 08:00 ]

投手出身の(左から)ヤクルト・高津監督、広島・佐々岡監督、中日・与田監督
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 【宮入徹の記録の風景】今季のセ・リーグは、2年目を迎える中日の与田監督に加え、広島・佐々岡監督、ヤクルト・高津監督と投手出身の監督が新たに就任。一気に3人に増えた。同一リーグ、同一シーズンに公式戦の登板経験がある指揮官が開幕時に3人は89年のセ・リーグで藤田元司監督(巨人)、星野仙一監督(中日)、村山実監督(阪神)とそろって以来31年ぶり史上2度目の珍しいケースになる(プロで登板経験があっても野手出場の方が多い監督は除く)。

 パ・リーグでは同一シーズンに2人が最多で3人はない。それでも最近では15、17年にソフトバンクの工藤監督は投手出身で2度のリーグ制覇。17年からは3年連続日本一を継続中とパでは傑出した結果を残している。今季リーグ優勝を果たせば3度目。投手出身監督で3度のリーグ優勝は藤田監督(巨人4度)、星野仙一監督(中日2度、阪神、楽天各1度)の4度に次ぐ歴代単独3位に浮上する。

 1リーグ時代に投手出身監督で優勝したのは44、47年若林忠志監督(阪神)1人。いずれも投手兼任のプレーイングマネージャーとして栄冠を手にした。2リーグ分立後では1年目の50年に湯浅禎夫監督(毎日)がパ・リーグを制したのが最初。ただし、マウンドに立ったのは優勝決定後の1試合だけ。既に48歳と高齢で、いわばファンサービスの一環としての登板だった。

 その後、60年代は1人も現われず、74年にロッテの金田正一監督がようやく3人目となった。現役時代は不滅の通算400勝をマーク。昨年10月6日に86歳で亡くなったが、初めてリーグ優勝を決めた74年10月9日阪急戦(前後期制プレーオフ)ではまだ41歳2カ月の若さ。2リーグ制後の投手出身の優勝監督としては最年少記録だ。

 投手出身監督の優勝経験者は10人(19度)を数える。当該シーズンのチーム投打成績をみると、チーム防御率がリーグ1位は9度。2位が8度、3位が2度で4位以下はない。やはり投手力の充実は譲れないのだろう。もっとも、チーム打率も3位以上が18度あり、4位以下は1度と悪くない。ただ、本塁打1位は5度と少なく、打撃に関しては堅実さ重視の方針が奏功している。

 球団別では前出の藤田監督が率いた巨人の4度が最多。次いで、阪神、中日、西武各3度と続く。広島では長谷川良平監督が65年途中から67年まで指揮を執ったが66年の4位が最高。ヤクルトでは63年浜崎真二監督、64、65年林義一監督、68~70年別所毅彦監督、85、86年土橋正幸監督といて、最高順位は63年浜崎監督と68年別所監督の4位。広島、ヤクルトとも投手出身監督のAクラス入りはない。佐々岡、高津両監督がクライマックスシリーズ進出すれば、最高順位になる。

 また、就任1年目の優勝監督は19人。うち、投手出身は15年工藤監督まで5人いる。セ・リーグでは81年藤田監督と98年権藤博監督(横浜)の2人だけ。新人監督の枠を除いても、00年以降のセ・リーグで優勝したのは03年星野監督(阪神)しかいない。絶対数は少ないものの、最近は野手出身の監督に押され気味だ。今季の3人は現役時代に与田監督、高津監督が最優秀救援投手、佐々岡監督は最優秀防御率、最多勝といずれもタイトルを獲得している。今季新たな勲章を加える監督が生まれるか注目したい。(敬称略)

 ◆宮入 徹(みやいり・とおる)1958年、東京都生まれ。同志社大卒。スポニチ入社以来、プロ野球記録担当一筋。94年から15年まで記録課長。

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