米独立リーグ球宴でストライクの判定にコンピューター・システムを採用 野球界初の試み

[ 2019年7月11日 13:16 ]

球場に設置されたドップラー・レーダー(AP)
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 米独立リーグ、アトランティック・リーグのオールスターゲームが10日にペンシルベニア州ヨークで開催されたが、ストライク、ボールの判定は球審ではなく、野球界では初めてコンピューターの判断に委ねられた。

 竜巻などの気象観測に使われているドップラーレーダー(ドップラー効果による周波数の変移を観測することによって移動スピードなどを計測する機器)をバックネット裏に設置にし、ストライクとボールの情報を、球審が携帯したスマートフォン経由でコードレスのイヤホンで受信する「トラックマン・コンピューター」というシステム。ただしワンバウンドしたあとにストライクゾーンに入ってきた場合、このシステムでは「ボール」だとは認知されないため、「チェック・スイング(ハーフ・スイング)」を含めて最終的な裁量は球審に任せられた。

 AP通信によれば、歴史的な“最初の職務”を遂行することになったブライアン・デブローワー球審は「100%の信頼感が出てくるまで自分が判定する準備をしていた。何か間違っていれば自分が訂正するつもりだった」と試合前に語っていたが、いざ試合が始まると送られてくる情報をそのまま採用。ただし内野手のL・J・マジーリ(28)は「コールが数秒遅れてしまうケースが何回かあった。打席に立っていたらずいぶん遅れて三振だと言われていた。野球が進化していくのを見ることができたのは良かったが、将来性はどうだろう?」と疑心暗鬼。元オリオールズのミッチ・アトキンス(33)も「いままでの基準より少し高い球でもストライクと判定されていた」と違和感を抱いていた。

 アトランティック・リーグのリック・ホワイト会長は今後予定されている公式戦でも「トラックマン・コンピューター」を採用すると明言。球場を視察に訪れていた大リーグ機構(MLB)運営部門のモーガン・スウォード副社長も「MLBにとってもエキサイティングな1日になった。この構想はずっと前からあったがようやく実現した」と前向きな姿勢を示した。ただし同副社長は「これは審判の権威をテクノロジーによって高めようとするものであって、審判を排除するものではない」と完全な“無人化システム”は否定。MLBのロブ・マンフレッド・コミッショナーもメジャーでの導入時期については「今のところ予定していない」と語るにとどまった。

 なおアトランティック・リーグは1998年に発足した独立リーグで現在は8チームが所属。日本のプロ野球界からは仁志敏久(元巨人)や渡辺俊介(元ロッテ)らがここでプレーしている。

 
 

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