首位打者、ベストナイン…飛躍の巨人・坂本 熟考して語ったこの1年

[ 2016年12月1日 11:00 ]

大幅アップで契約を更改し150号本塁打の写真に「優勝」と記した巨人・坂本
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 プロ野球担当として選手を取材していると、印象的な言葉に出合うことが多々ある。6年前、当時20歳だったある選手の言葉もそのひとつ。「子どもの頃、野球のテレビゲームで好きな選手の能力が高いとうれしかった。だから自分もいい成績を残さないといけないですよね」。まだあどけなさの残る表情で語っていたのは巨人の坂本勇人だ。

 今季、巨人は2位ながら広島に独走でリーグ優勝を許し、DeNAと対戦したクライマックス・シリーズ(CS)ファーストステージ(10月8~10日、東京ドーム)も1勝2敗で敗退。それでもシーズン打率・344で自身初の首位打者に輝いた坂本は2本塁打を放つなど孤軍奮闘した。

 先日、都内で坂本と話す機会があった。好成績の理由を問うと「特に変えたところはない」とそっけなかった。「何か少しでも変わったところはないか?」としつこく聞くと、しばらく熟考して語り出した。「今年は応援してくれるファンのためにという気持ちがより強くなった。自分にとっては普通の試合でも球場に来る子どもはもしかしたらその試合が一生の思い出になるかもしれない。だから3タコ、4タコは絶対にやめようと思いました」。6年前の言葉と通じるものがあった。

 プロ野球のシーズンは140試合以上の長丁場。チームとしては負ける試合、打者であれば凡打に終わる打席も多い。それでも球場に足を運ぶファンはチームの勝利であり、ひいきにしている選手の本塁打を思い描きながら応援する。より強くなったファン、特に子どもたちへの思いが、今季の原動力のひとつの要因だった。11月10日から13日まで行われた侍ジャパンのメキシコ、オランダとの強化試合(東京ドーム)でも正遊撃手として堂々とプレーした。かつて自身が西武時代の松井稼頭央(現楽天)に魅了されたように今は野球少年たちの憧れの存在だ。

 節目のプロ10年目でもうひとつ上のステージに立った坂本。今オフはベストナインやゴールデングラブなど表彰式が続いているが、記者が見る限り心の底から笑ってはいない。来年オフはチームを優勝させ、会心の笑顔を見せてくれるはずだ。(記者コラム・山田忠範)

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2016年12月1日のニュース