【決断】阪神・福原 引き際教えてくれたストレートの“さび”

[ 2016年12月1日 12:00 ]

決断2016ユニホームを脱いだ男たち=阪神・福原忍投手(39)

8月27日のウエスタン・リーグ広島戦で岩本に3ランを浴びた福原
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 カクテル光線に照らされたグラウンド。プロ野球の晴れ舞台から、このオフも多くの選手が身を引いた。現役引退という「決断」、その心情に連載で迫る。第1回は阪神・福原忍投手(39)。

 伝家の宝刀に生じたわずかな“さび”が決断の決め手となった。福原といえばストレート。最後まで真っ向勝負にこだわった。ただ、自信を持って投じたはずの1球が、2軍の選手に芯で捉えられてしまう。引き際を教えてくれたのも、やはりストレートだった。

 「自分の中では夏ぐらいから考えていた。自分で空振りを取れると思ったボールが、フライになったりホームランになったりということもあった。まだできるという気持ちと、もう引退しようという気持ちが、日々、入れ替わる感じでした」

 9月23日の涙の引退発表。悩み、苦しみ続けてきた今季の葛藤を初めて口にした。4月20日に出場選手登録を抹消されると長い2軍生活。8月27日のウエスタン・リーグ広島戦(鳴尾浜)では岩本に3ランを浴びるなど1死も取れずに4失点と炎上した。自分の思うようなボールが行かないこともあったが、それ以上に戦力になれていないことがつらかった。金本監督への引退報告では「チームの力に、監督の力になれなくてすみません」とわびた。

 98年ドラフト3位で入団。その速球はすぐに耳目を集め、00年7月13日の中日戦(ナゴヤドーム)では球団最速記録(当時)の155キロを叩き出した。04、06年は先発で2桁勝利。ただ、度重なるケガもあり30歳代前半は成績が落ち込んだ。

 10年からの本格的なリリーフ転向を機に「直球投手」という原点を見つめ直した。「いろんな人のアドバイスもあってもう一度、ストレートをしっかり投げようと」。本来の姿を取り戻し、14、15年と2年連続最優秀中継ぎ投手に輝いた。

 10月1日の引退試合。プロ初登板と同じ巨人を相手に満員の甲子園のマウンドに立ち、3球全て真っすぐで立岡を左飛に仕留めた。こだわりの球だけに「微妙かな」と自己評価は辛めだが「最後の最後までストレートで勝負できて良かった」と笑った。投げるボールと同じく、阪神一筋、真っすぐ歩んできた18年間のプロ生活に、福原らしいピリオドを打った。 (山添 晴治)

 ◆福原 忍(ふくはら・しのぶ)1976年(昭51)12月28日生まれ、広島県出身の39歳。広陵―東洋大を経て98年ドラフト3位で阪神入りし、1年目から救援で10勝9セーブ。先発に転向し06年に自己最多12勝を挙げた。10年から救援に再転向し、14、15年は最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得。1メートル80、96キロ。右投げ右打ち。来季は阪神ファーム育成コーチを務める。

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