【内田雅也の追球】苦肉の策も…選手の慢心引き締めた初回バント

[ 2016年8月15日 08:20 ]

<神・中>1回無死一塁、大和が送りバントを決める

セ・リーグ 阪神8―1中日

(8月14日 京セラD)
 阪神今季2度目のカード3連勝で共通していたのは、1回裏先頭が出塁した後に指示した送りバントである。3試合とも2番・大和が投前に転がして決めた。

 従来、阪神が初回無死一塁で送りバントを使うのは珍しい。監督・金本知憲は攻撃型オーダーを理想とし、無死一塁では強攻策で好機を拡大、ビッグイニングを狙いにいく野球を目指している。背景には「バントで送っても、打たせても得点確率は変わらないわけでしょ。むしろ打たせた方が大量点も望める」という統計を基にした考え方を聞いたことがある。

 チーム犠打数がセ・パ12球団で最少(59個=13日現在)と、今季の阪神はバントが少ない。特に試合前半で使うことはめったになかった。

 2番には開幕から横田慎太郎、江越大賀、鳥谷敬、西岡剛、今成亮太、俊介、上本博紀、大和、板山祐太郎、北條史也、荒木郁也……と試行錯誤を繰り返してきた。だがいわゆる「強打の2番」は今の陣容では難しい。背に腹は代えられない現状があり、この3連戦は2番・大和で「初回バント」を採用したのだろう。

 ただし、それだけの理由だろうか。試合前、打撃コーチ・片岡篤史が話していたそうだ。中日の予告先発は新人の小笠原慎之介。昨夏の甲子園大会優勝投手だがプロではまだ勝ち星がない。それでも片岡は「新人という気持ちではなく、普通のローテーション投手のつもりで攻略にいきます」と、油断や慢心を戒めるように話していた。

 中日は打線も主砲ビシエドまで負傷で欠き、若手主体のメンバー。心の隙が生まれても不思議ではない試合だった。

 つまり、この夜の初回バントには選手の慢心を引き締める効果も狙っていたのではないか。

 そして狙いは成功している。バントの直後、1死二塁から江越大賀が先制2ランを放った。

 3回裏無死二塁も大和にバントをさせた。この回は後続がなかったが、追加点の重要性はチームに浸透したはずである。4回裏には下位から上位へ、好球必打の選球と快打でKOしてみせた。

 藤村富美男生誕100年の記念日だった。球団創設初年度の1936年(昭和11)、呉港中から入団した19歳の藤村は主に2番を打っていた。2番が光った試合もまた、何かの因縁だろう。 =敬称略= (スポニチ編集委員)

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