【夏の1ページ】天国の父と交わした2つの約束が心の支え

[ 2016年8月11日 07:30 ]

<関東第一・広島新庄>佐藤奨(左)に声をかける関東第一・佐藤佑

第98回全国高校野球選手権第4日・1回戦 関東第一1―2広島新庄

(8月10日 甲子園)
 関東第一ナインが涙にくれる中、佐藤佑は心の中でつぶやいた。「お父さん、やりきったよ」

 今春センバツを迎える直前の2月下旬、父の光晴さんを心不全で亡くした。まだ48歳だった。長く闘病していたが容体急変の知らせを受け、学校を早退して実家のある茨城県内の病院へ駆けつけた。「甲子園で優勝して来い」「俺も頑張るからお父さんも頑張れ」。病床で交わした約束が、最後の言葉だった。

 小さい頃は一緒にキャッチボールをしたり、野球観戦にも連れていってくれた。優しくて野球が大好きだった。「父との言葉を忘れず約束を果たす」と、どんなつらい練習にも耐えた。センバツでは東邦(愛知)に初戦で敗れたが、夏の東東京大会を連覇。父と2人で撮った写真をかばんにしのばせ、甲子園に乗り込んだ。

 強肩が自慢の捕手。8回、9回に二盗を刺したが、延長12回の末に1点差で敗れ、「できることは全部やった。悔いはない」と涙をこらえた。大学でも野球を続ける。「父とプロになると約束したので」。もう一つの約束を果たすため、前を向いて再出発する。 (松井 いつき)

 ◆佐藤 佑亮(さとう・ゆうすけ)1998年(平10)4月18日、茨城県生まれの18歳。小1から野球を始める。牛久三中時代は取手シニアでプレーし、全国大会準優勝。関東第一では1年秋からベンチ入りし、2年秋から正捕手。家族は母と妹。1メートル71、75キロ。右投げ右打ち。

続きを表示

2016年8月11日のニュース