ヤクルト山中、熊本魂1勝!27歳まで暮らした故郷に「明るい光を」

[ 2016年4月21日 05:35 ]

<神・ヤ>今季初登板の山中は6回1失点と力投

セ・リーグ ヤクルト5―1阪神

(4月20日 甲子園)
 今季初先発初勝利も笑顔はない。ヤクルト・山中はお立ち台で時折声を詰まらせながら、言葉を紡いだ。

 「普段と違った思いでマウンドに立ちました。勝利を被災地にプレゼントできて…良かったかなと思います。被災地の方は本当に…大変だと思うんですけど、僕らはこうやって野球しかできないですけど一つでも多く、明るい光を与えられればと思います」

 熊本県出身の下手投げ右腕は27歳でプロ入りするまで全て地元チームでプレーした。
午前8時から正午すぎまで働いたHonda熊本時代、都市対抗出場が決まると同じ部署の社員らが壮行会を開いてくれた。期待に応えようと、部員の中で最も遅い午後8時すぎまで練習するのも珍しくなかった。プロ入り後も、熊本の会社が製造する岩塩「力塩」を暑さ対策で愛用。熊本愛は深い。

 幸せな日常が、熊本地震で消えた。1月の自主トレで訪れた競輪場はバンクがひび割れレース開催できる状況にない。高校時代に同学年だった部員の熊本市内の自宅は全壊。連絡すると「希望もない」と言われた。古巣の工場も稼働停止に追い込まれた。「先行きが見えない」。かつての同僚たちの声を聞くのがつらかった。

 「何とか励みになれば。明るい希望になれば」と必死に腕を振った。6回2死二、三塁では西岡を外角いっぱいの直球で空振り三振。6回1失点の快投に真中監督は「凄く丁寧に投げてよく粘ってくれた」と評価した。「ロッテの伊東監督、(同僚の)松岡さん、阪神の岩貞や熊本出身者が先頭に立っていければと思う」。強い絆で結ばれた故郷の仲間たちの支えになりたい。山中は投げ続ける。(平尾 類)

 ▼ヤクルト・高津投手コーチ(山中は)他の投手の刺激になる。粘り強く投げてくれて頼もしい。

 ◆山中 浩史(やまなか・ひろふみ)1985年(昭60)9月9日、熊本県生まれの30歳。必由館では03年夏の甲子園に出場も、1回戦で光星学院(現八戸学院光星)に敗れる。九州東海大、Honda熊本を経て12年ドラフト6位でソフトバンク入団。14年7月にトレードでヤクルトに移籍した。1メートル75、82キロ。右投げ右打ち。今季年俸2200万円。

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2016年4月21日のニュース