サヨナラ打の楽天・嶋 熊本に思いやりお立ち台「5年前に支えられた」

[ 2016年4月21日 06:01 ]

<楽・オ>延長12回2死一、二塁、左越えにサヨナラ打を放ち、ナインから祝福される嶋

パ・リーグ 楽天4―3オリックス

(4月20日 コボスタ宮城)
 東北から九州へ熱いエール!楽天は20日、オリックス戦で劇的なサヨナラ勝ちを収めた。3―3の延長12回に嶋基宏捕手(31)が左越えに決勝打。嶋は6回にも同点に追い付く今季1号の左中間ソロを放ち、同点弾&サヨナラ打の大活躍を見せた。2011年の東日本大震災の際に名スピーチを残した嶋は、ヒーローインタビューで地震で甚大な被害を受けた九州の人々へ激励のメッセージを送った。チームは連敗を6で止め、4位に浮上した。

 ファンは大歓声をやめ、ヒーローの言葉に聞き入った。サヨナラ勝利の余韻が残るお立ち台。5年前に東北をフランチャイズとするチームの選手会長として東日本大震災に直面した嶋は、熊本地震の被災地を思いやり、力強い言葉を発信した。

 「5年前に(東日本大)震災が起きて、たくさんの人たちに支えられました。今、熊本で困っている人たちがたくさんいます。少しでも力になれるように、熊本に温かい気持ちを送って日本を盛り上げましょう!」

 6連敗で迎えた試合は3戦連続で延長戦に入った。負けがなくなった延長12回2死一、二塁。6回に同点の1号ソロを放っていた嶋に6打席目が巡った。3ボール1ストライクからの5球目、高めに抜けた142キロの直球を強振。バットは折れたが、気迫で放った打球は前進守備の左翼手を越えた。一塁ベースを回って右拳を突き上げ、三塁ベース付近でヘッドスライディング。まだ寒さが厳しい中、ナインから歓喜のシャワーを浴びた。

 11年に甚大な被害をもたらした東日本大震災では「見せましょう、野球の底力を」という名セリフを含めた感動のスピーチで東北の被災者を励ました。2年後の13年には球団初優勝と日本一で被災地に勇気と元気を届けた。熊本を含めた全国からのサポートへの感謝の念は強い。チームは熊本地震が発生して間もない15日から17日まで同じ九州の福岡に滞在。夜中に何度も緊急地震速報のアラームが鳴るなど、改めて大地震の恐怖を思い起こした。選手会の発案で試合後に1軍選手全員で球場正面入り口付近で募金活動も実施し、多くのファンが集まった。

 どうしても勝ちたかった。6連敗中は終盤に逆転されるケースが多く、前日19日の同戦(東京ドーム)では小谷野に2本塁打を許した。主将として、扇の要として責任感は強く「バッテリーとして反省することが多かった」という。「今日は勝利に貢献できてよかった」と安どの表情も見せたが、「まだ借金は1ある。返済したい」とすぐさま表情を引き締めた。

 チームは昨年7月から続いていた延長戦の連敗(1分け挟む)も9でストップ。練習前には野手を集めて「今日から開幕のつもりでやろう」と声を掛けた梨田監督も、殊勲打を放った嶋について「同点の一発もあったし、最後もいいところで打ってくれた」と称えた。

 「僕たちは(東日本大震災で)本当に助けられました。野球選手として少しでもいいところを見せたいです」。遠く離れていても、嶋の「思い」は被災地とともにある。(山田 忠範)

 ▽嶋のスピーチ 全国6球場で東日本大震災の慈善試合が開催された11年4月2日。楽天選手会長の嶋は日本ハム戦(札幌ドーム)の試合前に3分を超えるスピーチを行い「今、スポーツの域を超えた野球の真価が問われています。見せましょう、野球の底力を。見せましょう、野球選手の底力を。見せましょう、野球ファンの底力を。ともに頑張ろう、東北。支え合おう、日本。僕たちも野球の底力を信じて、精いっぱいプレーします。被災地のために、ご協力をお願いします」とスタンドのファンに訴えた。

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